みなさんはキャンプのギアをどう選びますか。ネットに情報があふれる時代、無数のレビューを見比べて、とりあえず無難なものを購入していた筆者。いつしか実物を手に取って選ぶ機会も少なくなりました。
そんな折、何気なく立ち寄ったのが個人経営のアウトドアショップ。選りすぐりのギアや珍しいガレージブランドなど奥深い世界が広がっていました。
ネットや量販店とは一味違う魅力を放つショップを巡る連載「ふらっとショップ探訪」。第21回は、大阪市北区のヴィンテージキャンプ用品の専門店「ERECTORS(イレクターズ)」を紹介します。
大阪の中心部にたたずむレトロなお店
ヴィンテージキャンプ用品を専門に扱う「ERECTORS(イレクターズ)」。大阪の地で開業して約20年、ヴィンテージもののランタンや釣り具、古着などアメリカから直接仕入れた珍しい品々を取り扱っています。
オーナーの大前成忠さん(52)は元々、大阪の楽器販売会社に勤めていたそう。趣味で釣りにのめり込み、キャンプと掛け合わせて楽しむように。次第に年代物のギアへの興味が芽生えると、アメリカに渡って買い集めるほど夢中になり、ついには一念発起して開業を決意するにいたりました。
オープンしてしばらくは転々と店の場所を変え、行き着いたのは下町の風情が色濃く残る中津の高架下。「レトロな空間が店の雰囲気と相まってお客さんの評判も良かった」と大前さんは振り返ります。
2018年春、高架橋の耐震補強工事のため退去をせざるを得ず、惜しまれつつも移転することに。ただ、JR大阪駅から徒歩圏内のエリアに移った今も、店内に足を踏み入れれば、隠れ家のような独特の雰囲気が漂います。
店主の手で蘇るヴィンテージランタンの数々
店内には、「Coleman(コールマン)」「Sears(シアーズ)」「DIETZ(デイツ)」などのヴィンテージランタンがずらり。1950~80年代のものを中心に、100年以上も前の希少な品が並ぶこともしばしば。一点一点を大前さんが整備し、すぐに使用ができる状態で販売されています。点火方法やメンテナンスも教えてもらえるので初心者でも安心です。
ヴィンテージランタンの楽しみ方は人それぞれ。キャンプに取り入れて前時代的な雰囲気を味わうもよし、自宅にディスプレイして夜な夜な分解するのもよし。自分の誕生日と同じ年月の「バースデイランタン」を探し求める人も多いそう。
ヴィンテージと一括りに言っても、年代や型式によって微妙に構造は違うもの。今でこそ知識豊富な大前さんですが、「当初は試しにばらして構造を解読しながら手探りで勉強しました。はるばる持ち帰ったランタンをダメにしたのは一度や二度ではありません」と懐かしみます。
ランタンに負けず劣らず、往年のストーブも数多く展開。オーストリア製の傑作ストーブ 「PHOEBUS(ホエーブス)」のNo.625、725、比較的リーズナブルな508Aなどが所狭しに並びます。よく見ると、欧州やNATOの軍に供給されていたレアなモデルもあります。
ランタンやストーブに液体燃料を注ぐのに使うファンネル(漏斗)もディスプレイされています。銅やアルミなど素材も様々で、ランタンの製造年と合わせて一緒に購入する人も多いそう。そのほか「DIETZ(デイツ)」のホヤをはじめとした関連アイテムも各種取り扱いがあります。
ノスタルジーな釣りへと誘う往年の道具たち
大前さんの趣味である釣り関連のヴィンテージ品も見応え十分。主に1970~80年代のものが多く、大小さまざまなオールドルアーのユニークな造形や配色は、見ているだけでワクワクさせられます。古いものだけでなく国内の作家が手作りしたルアーも必見です。
年代物ながら質実剛健な作りで今でも現役のリールも並びます。筆者自身が釣りに疎いため、その魅力を十分に伝えきれないのが悔やまれますが、何十年もの時を経てなお釣り好きを魅了する道具としての存在感が確かにあります。
大前さんは「僕ら昭和世代の子ども頃の遊びと言えば釣り。かつては手の届かなかった憧れの釣り具も今ならお手頃で使えます。ノスタルジーな気持ちに浸りながら竿を振るのもいいものですよ」と話します。
訪れる度に新しい発見があるかも
そのほかにも、店内を隈なく見て回ると、テーブルやチェア、クーラーボックスなどキャンプに役立つアイテムが並びます。もちろんヴィンテージの一点ものも多いので、出会えるかどうかは店に足を運んでみてのお楽しみです。
アウトドア古着の定番でもあるパタゴニア、コロンビア、L.L.Beanなどもラインナップ。現行品にはないシンプルな作りやカラーリングが魅力的です。無地TシャツやLevi’sといった普段使いしやすいものもあります。
オーナーのおすすめ3選
Coleman(コールマン)の「model252A G.I.ランタン」(1958年)
ODカラーに黄色のデカールが映えるコールマン製のG.I.ランタン。タンク裏に打ち込まれた「1958」の刻印がその歴史を物語ります。252は米軍の要請で1944年に開発されたミルスペックランタン。それだけに、細部に軍モノらしい機能美が光る逸品です。
大前さんの一言メモ
「特徴的な4分割グローブ、予備マントルの収納スペース、鎖でつながれたジョウゴやフタなど、官給品ならではのギミックが満載です。古い品ですがしっかり整備しているので調子良く点灯します」
PHOEBUS(ホエーブス)の「No.625」
1960~70年代の登山ブームで爆発的な人気を誇った傑作ストーブ。ガスが主流となった今では生産されなくなりましたが、シンプルな構造で壊れにくく、液体燃料で高火力を得られるホエーブスは重宝されていました。
大前さんの一言メモ
「ホエーブスは当時の登山家たちから”ブス”の愛称で親しまれていました。昭和を代表するギアのひとつとして、多くのアウトドアマンの脳裏に刻まれているはず。ブリキ缶に収納されているというのも乙なものです」
ABU(アブ)の「Ambassadeur 5000C」
創業100年以上のスウェーデン発釣具ブランド・ABU(アブ)。その歴史を語る上で外せないのが、1952年発表のキャスティングリール「Ambassadeur(アンバサダー)」シリーズ。黒のボディに、スウェーデン王室御用達の証しであるクレストマークがあしらわれています。
大前さんの一言メモ
「実は日本ともゆかりが深いこの5000C。作家であり釣り人でもある開高健の作品『フィッシュ・オン』や漫画『釣りキチ三平』の名シーンで登場しているんです」
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まとめ
「ERECTORS(イレクターズ)」という店名は、大前さんが好きなバンドの名称の一部から取ったもの。古道具を収集する“コレクター”に近い響きがあるのも決め手となったそう。店名ひとつとっても、大前さんならではのこだわりが滲み出ています。
ヴィンテージのギアは気になるけど、ハードルを感じて一歩踏み出せないという人にもイレクターズはおすすめ。気さくな人柄の大前さんが購入後も相談に応じてくれ、メンテナンスも請け負ってくれます。気になる人はぜひ店に訪れてみてください。一期一会の出会いが待っているかもしれませんよ。
「ERECTORS(イレクターズ)」基本情報
所在地:大阪市北区豊崎1-4-5-103
営業時間:12:00~20:00、火水定休
TEL:090-8572-8121
公式ホームページ:https://ameblo.jp/erectorsjp/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/erectors_op/?hl=ja
公式フェイスブック:https://www.facebook.com/erectors/