ある日、ネット記事が目に留まった私。それは「山を買って自分だけのキャンプ場をつくっている人が増えている」というもの。最初は「ふーん」と流したものの、何か心に引っかかるものが……と考えて数秒、気が付きました。
「これ、お父さんじゃん」
そう、私の父は何年も前から記事に登場する人々と同じく「山を買って自分だけのキャンプ場を造ること」をやっていたんです。
再び始まった父の山ごもり
昔からアウトドアが好きな私の父、御年60歳。私の幼少期には、キャンプに行ったり、車遊びをしたり、家族みんなでアウトドアへ出掛けていました。今思えば、休日に家で過ごすことがほとんどない家族だったと思います。
父は以前にも、長野県内にある山中の土地を買ってきて、自ら切り開き山小屋を建てることにハマっていたことがありました。もちろん私たち家族も、その頃は毎度長野に出かけるのが日常でした。
そして十数年後…
父はある時から、休日や連休になると一人で沢山の荷物を抱え、下道をのんびり走りながら千葉県の自宅から群馬県のとある山中へ向かうようになりました。
「父は山にこもっているらしい」
山小屋づくりを終えて以来、再び始まった父の山ごもり。一体なぜ山ごもりをしているのか、当時は見当もつきませんでした。
父が山にこもる理由
父に話を聞いてみると、数年前に手に入れた群馬の山の中を開拓して、自分だけのキャンプ場をつくっていると言い出しました。
「キャンプがしたいなら、キャンプ場に行けばいいじゃないの?」と私。
「最近のキャンプ場は便利すぎるし、他人との距離が近くて面白くないだろ」と返す父。
便利な高規格キャンプ場や、キャンプ人気により混みあったキャンプ場を好まない人がいるのです。
今のキャンプは便利な設備に満たされすぎていて、父の思うキャンプとは違うようです。父は、昔ながらの自然に近いキャンプがしたいらしいのです。
ボウッと灯るランタンの光を頼りに歩き、夜まで仲間と楽しく焚き火を囲んで歌い、キャンプファイヤーを楽しむ。みんなが寝静まるころ、テントの中で風の音や木々のざわめきに耳を澄ます。父にとってキャンプとはそういう場所なんだそう。
そんな理想のキャンプ場をつくるために、ひとりで(たまに仲間と)山ごもりをしていました。
父がまずしたこと
最近、ワゴン車などをカスタムして車中泊ができるようにした車両が流行っていますよね。
父も同じことをしていました。山の中にキャンプ場をつくるとなると、急な天候の変化や仮眠用に車中泊ができるようにしなくてはなりません。自然が相手では、常にテント泊ができるコンディションが整っているわけではないからです。
軽バンの床を整えて、簡易的な棚を設置し、必要な荷物を持ってブラっと群馬に向かいます。
木の伐採などを終えて最初に取り掛かったのは、ウッドデッキ造り。
これで地面の状態に左右されずにテントが張れるようになります。車中泊ができると言っても、やはりテント泊はしたいようです。
ここをベースに、新たな開拓が始まりました。
山の整地
個人で楽しむキャンプ場と言っても、やはりある程度の整ったスペースが必要になります。
森の木を切り倒しただけでは、整地とは呼べません。山の中は一見平たく見えても、かなりでこぼこしています。しっかりと大地に根を張った木の根、岩などがそこかしこにあります。
人の手でこれらを取り除く作業をするには限界があります。そこで父は小型のショベルカーを投入しました。実は父、以前中古のショベルカーを買っていたんです。
ショベルカーをトラックに載せて山に向かい、自ら土地をならしていきます。さすが重機、どんどん作業が進みます。
大きな木の根がこんなに。確かに重機が必要です。
ショベルカーの力を借りても、やはり結構な重労働だったようで、数回に分けて作業をしたそうです。「かなり時間が掛かった」と熱弁する父。
ちなみに抜いた木の根や、切り倒した木々は、薪として作業の合間に焚き火……ではなくキャンプファイヤーに使います。そうです、父がしたいのはキャンプファイヤーです。
実家に置いてそうな鍋です。食事は適当な具材を放り込んで作る鍋や、サッとお湯だけ沸かして作れるカップ麺など、簡単なもので済ませているそう。
でもそれがまた楽しく、しかも山で食べると一層美味しく感じるんだそうです。