以前よりLANTERNで取り上げてきた自転車キャンプ。最近、キャンプ系メディアの枠を越えテレビなどでも特集されるなど、人気を呼んでいます。
一方で、車と違って持っていけるキャンプ道具が限られる自転車キャンプは、搭載するギアをいかにまとめられるかという、「パッキング」がとても重要になります。
このパッキング、きちんとした知識と準備の上に行わないと、自転車での走行中にふらついたり、タイヤに接触したりと危険な場合も。
前回、自転車によるソロキャンプでの装備についてご紹介させていただいた筆者。
↓ 前回の記事 ↓
輪行ソロキャンプにマッチする自転車&装備とは?高機能な搭載グッズも紹介
今回は自転車パッキング方法をスタイル別でご紹介するとともに、注意点を解説します。
さらに、自転車パッキングで有名なイギリスのメーカーAPIDURA(アピデュラ)の総代理店、オルタナティブバイシクルズの北澤社長にご協力いただき、筆者の自転車を使って、実際にフィッティングしながらパッキングのコツをじっくりレクチャーしてもらいました。
これから自転車キャンプに挑戦する方や、これまで何となくパッキングしてきた方にも役立つ情報だと思いますので、その様子も合わせてご紹介します。
自転車パッキングのはじめ方
まず、ソロキャンプの道具一式を、どのようなスタイルで運ぶか、考えてみましょう。
ちなみに筆者のキャンプ道具一式はこちらです。
バックパックスタイル
1番シンプルな方法は、バックパックひとつに全ての荷物をパッキングする方法です。
使用するテントや寝具などのギアの重さや数、大きさにもよりますが、一泊二日のソロキャンでしたら、30リットル〜45リットル程度のバックパックで十分だと思います。
ちなみにバックパックスタイルで最も参考になるのが、ハイカー向けの「テント泊登山」の情報です。ウルトラライトなキャンプギアから荷物のまとめ方までたくさんの情報が手に入りますので、インターネットで検索してみてください。
バックパックスタイルを確立できれば、自転車だけでなく、電車やバス、飛行機などの交通手段の選択肢が増えるので、幅広くキャンプや旅を楽しむことができるでしょう。
注意点もあります。
バックパックが重くなると、それを背負って自転車を漕いでの長距離移動は、正直言ってかなりキツいので、あまりおすすめできません。
また、容量の大きなバックパックは、使用する方の骨格、体格などによってフィット感が違います。必ず専門店などで実際に背負ってみて、“背負い心地”を確認してからの購入をおすすめします。
積載量が大きい仕様の自転車を使用するスタイル
後ろに荷台が備え付けられていたり、前に荷物を載せられたり、フロントフォーク(前輪のホイールを挟んでいるパイプ部分)に荷物を搭載できるようなモデルの自転車も発売されています。
例:https://ec.cb-asahi.co.jp/catalog/products/4FCF04B4585A44A6892DD830F6020314
そんな“積載力”の高い自転車を旅の相棒に選んでいる方は、選べる自転車バッグは無数にあります。キャリアを利用して、パニアバッグを取り付けたり、トランクカーゴなどのストレージボックスを搭載すれば、積載力は飛躍的にアップします。
スポーツ自転車+パッキング専用バッグのスタイル
筆者が普段乗っているマウンテンバイク(以下、MTB)もこのスタイルに当てはまります。他にも長距離を移動できる、ロードレーサー・ロードバイクと呼ばれるタイプの自転車もこのスタイルで荷物を搭載します。
これらのスポーツ自転車は、本来「走る」ことが目的ですので、軽量化の為にキャリア(荷台)等を取り付ける為のネジ穴が無いのが普通です。
そこで、パッキング専用バッグのほうで工夫をして、自転車の各部分に取り付けられる様に作られている物が発売されています。
今回はこのスポーツバイクに取り付けられるパッキング専用バッグをご紹介していきましょう。
自転車パッキングバッグの種類
スポーツ自転車に取り付けるバッグは、大きく分けて3種類に分けられます。これはバッグを取り付けられる自転車のパーツが主に3カ所であることに由来します。
1.ハンドルバッグ
ハンドル周りに取り付けられるバッグです。
MTBのようなフラットハンドル(一文字のハンドル)なら、10~15リットル程の容量のバッグがあります。
形状的に長い物も収納できるタイプのバッグが多くて便利です。容量と価格を比較するとコストパフォーマンスが高いアイテムが多い印象です。
ハンドルバッグを取り付けの際には注意点があります。
ブレーキワイヤーやシフトワイヤー等を、変に曲げないように気を付けて装着する必要があります。
特にワイヤー式のブレーキの場合、ブレーキワイヤーを無理に折り曲げてしまうと、最悪ブレーキが作動しなくなる大事故に繋がることがあります。
自信のない方、不安な方は、専門店でのフィッティングをお願いするといいでしょう。
2.フレームバッグ
自転車のサドルとペダル(クランクの付け根、ボトムブラケット)とヘッド(フロントフォークの取り付け部分)を結ぶ三角形の部分に、すっぽりと入るバッグです。
フレームの前三角の形状は、自転車のサイズだけでなく、用途や乗り味、性能によっても大きく変わります。自転車のモデルごとに形状が変わると言っても過言ではないでしょう。
その為、この三角形にピッタリ収まるフレームバッグに出会えず、結果的に小さなバッグを装着することとなり、容量で考えるとコストがかかるとも言えます。
ちなみに筆者が愛用するMTBは、この前三角のスペースが小さいので、ほとんど荷物を搭載できませんでした。
ここに荷物を搭載できると、重心的に考えても理想的だとは思いますので、こだわってみても良いポイントかもしれません。ちなみに後述しますが、筆者はこの後奇跡の出会いを果たします。
また、フレームバッグの上辺部分、サドルとハンドルをつなぐフレーム(トップチューブ)に装着するトップチューブバッグもあります。今回はフレームバッグの一部として取り上げます。
こちらは手元ですぐに必要なモノを取り出せるというメリットがあります。信号待ちといったちょっとした時間にスマートフォンなどを取り出すのに便利です。
ハンドルバッグの重みはハンドル操作に影響を及ぼすことがありますが、トップチューブバッグはそのような心配はありません。
ただし、容量は小さいので、小物入れとして使うのがいいでしょう。
他にも、同じように使えるアイテムとしてポーチがあります。
3.サドルバッグ
サドルに取り付けることで、リアタイヤ上部のスペースに荷物を搭載できるバッグです。
製品によっては20リットル弱も入る容量のバッグもあり、ある程度の長さの荷物も収納できます。しかし、バランスや位置に注意して取り付けないと、走行中に自転車がフラフラしたり、バッグがリアタイヤと接触したりするので注意が必要です。
特に、MTBやオフロード走行が可能なグラベルロードと呼ばれるロードバイクに装備されているドロッパーシートポスト(サドルの高さをワンタッチで低くできる)に装着した場合、リアタイヤとの接触の危険が増すので取扱いにも注意しましょう。
もちろん、うまく取り付けるコツを掴めば、コストパフォーマンスではハンドルバッグの次に高いと言えるバッグです。
MTBを持ち込んで、APIDURAのフィッティングをしてみた
前回の記事にも書きましたが、Amazonのセールで購入した中国製の格安フレームバッグを使用したところ、雨漏りが酷く大変な目にあいました。
二度とそんな目に遭わないように性能のしっかりしたアイテムを探していた筆者は、オルタナティブバイシクルズの北澤社長に「APIDURA」のバッグをお借りして防水実験をしました。すると水漏れすることもなくその実力を実感。それ以来購入を検討していました。
幸い、すでに持っていたハンドルバッグは防水性に問題がなかったので、まずはAPIDURAのサドルバッグを追加購入したいと思い、改めて北澤社長に相談してみました。
APIDURAのサドルバッグにもいくつかモデルがあり、リアタイヤとのクリアランス(ゆとり・隙間)も様々であることから、今回は特別に実際に自転車を持ち込んでフィッティングさせてもらえることになりました。
持ち込んだMTBは、Specialized(スペシャライズド)のFuse Expert 29というモデルです。
サドルバッグ購入
画像出典:オルタナティブサイクルズ
防水実験などを経て、当初購入を検討していたのは、エクスペディション・サドルパックの17リットルのモデルでした。
実は筆者、これまで自転車キャンプに出掛けるときには、20リットルのバックパックにマットやクーラーバッグ、薪などを外側にくくりつけて背負っていたので、かなり辛かったんです。
この荷物の半分以上をサドルバッグに移せれば、かなり楽に自転車を漕げるようになるだろうと考えました。
ところが北澤さんから思いもよらぬ指摘を受けます。
「サドルバッグが大きくなると、走行中に緩んできて左右に触れ出したり、リアタイヤに接触したりするリスクが高くなる。できれば7~10リットル位に収めた方が良い」とのアドバイスでした。
そしておすすめしていただいたのが、APIDURAの、バックカントリーシリーズの10リットルでした。
検討していたエクスペディションシリーズと、北澤社長おすすめのバックカントリーシリーズの違いを簡単に説明すると、エクスペディションはロードバイク向けで、バックカントリーがMTB向けのシリーズだということ。
二つを装着して比べると、バックカントリーの方が重心が低く、尚且つリアタイヤとのクリアランスが大きく取られていることがわかりました。
画像の通り、バッグの角度がバックカントリーの方が低く、リアタイヤとのクリアランスが広いのがわかります。
北澤社長からのアドバイスと、実際に比較した結果で総合的に判断し、サドルバッグはバックカントリーの10リットルモデルを購入することに決めました。
このサドルバッグ、装着してみるとしっかりとサドルに巻きつけることができ、さらにバッグ自体を上部に持ち上げながらサイドからのバンドをしっかり締め込むことで、左右にぶれることがなくなり、とても安定した走行ができる優れものでした。
シンデレラフィットなフレームバッグ!
画像出典:オルタナティブサイクルズ
せっかくなので、フレームバッグのフィッティングもしてみました。
フレームの前三角の形状から、バックカントリーの2.5リットルモデルなら収まるかなぁと何気なく当ててみたところ……なんとジャストフィット!
前述したとおり、フィットするアイテムになかなか出会えないフレームバッグ。購入予定ではなかったものの、これだけピッタリ収まっちゃうと、カッコイイし普段使いにも良いなぁと心が揺れてしまい、結局購入することに。
使ってみると、サイドの止水ファスナーでL字型にガバッと開くので、荷物の出し入れがとてもしやすいんです。XPACという高性能な素材を貼り合わせて作られているので、防水性・耐久性に優れているのも、素晴らしいです。
何かと便利なハンドル周りの小物入れ
画像出典:オルタナティブサイクルズ
そして、自転車を漕いでいる際に便利に使えるアイテムとして、ハンドル周りに追加できるポーチや、トップチューブ上部に取り付けられるトップチューブバッグもフィッティングしてみました。
普段の自転車の乗り方や好みによりますが、筆者はトップチューブにバッグを取り付けると、信号待ちなどでサドルからお尻を前に下ろす際に、少し圧迫感を感じたので、ポーチを選ぶことにしました。
このポーチは、巾着のように紐で絞り、絞り口をサイドに引っ掛ける事ができるので、ある程度の防水性もあります。
ペットボトルや補給食、小物など、走行中に手に取りたいものを入れるのに最適です。
ポーチ下部にフロントフォークなどに取り付けられるバックルが付いている為、ポーチがぶらつかないのも気に入りました。
多目的に使えるおすすめバンド!
ちなみに今回パッキングバッグ以外に「これは便利!」と思わず紹介したくなったアイテムを見つけました。
写真のように、バンドが二重構造になっており、また外側のバンドの内側には滑り止めも付いているので、脱いだジャケットを畳んでフレームにとめても、走行の振動で緩むことがなく、アイディア次第で色々な使い方ができる逸品です。
これで940円(税込)は買いでしょう!オルタナティブバイシクルズさんでも今イチオシなんだそうですよ。
8色から選べますので、ご自身のイメージカラーに合わせて使うのも良いですね。
まとめ
これからMTBやロードバイクなどのスポーツバイクで自転車キャンプを始めようと考えているキャンパーさんが、自転車パッキングのバッグ一式を揃えようとすると、まとまった予算が必要になってきます。
筆者としておすすめするのは、まずパッキングのスタイルをある程度決めて、不要な荷物を減らすことから始めるのがいいと思います。荷物が少なければ、それを収めるバッグも不要ですから。
そして、バッグの容量と価格のバランスを考え、コスパの高いものを選ぶことをおすすめします。そう考えると、まずはハンドルバッグか、サドルバッグから揃えていくのがいいんじゃないでしょうか。
ただし、以前の筆者のようにコスパを意識しすぎて、安いというだけでバッグを選ぶと思わぬ落とし穴にハマることもあります。
今回APIDURAのバッグを実際に使ってみて、機能性の高さから、改めておすすめできるアイテムだと思いました。
皆さんも、ご自身のスタイルに合ったソロキャン・パッキングを是非探してみてくださいね。