北海道足寄町ふるさと納税の旅 ~自然豊かな大地で育む地場のリアルを徹底取材 ~

公開日:2017 / 03 / 31
最終更新日:2020 / 03 / 25

広大で緑豊かな大地が生むモノ~酪農・畜産・畑作~

総面積1408.04kmに及ぶ日本一大きな町、足寄町は、この広大で豊かな土地を有効に活用した農林業が基幹産業となっています。夏は30度以上、冬は氷点下20度と寒暖差が大きい気候条件の中で、「どんな人達が農業を営んでいるのか?」「どんな思いを抱いているのか?」そんな足寄町の農家の皆さんに話を聞きました。

自然豊かな大地で育まれる放牧酪農の魅力「ありがとう牧場」

「ありがとう牧場」のオーナー吉川友二さんが大学卒業後、道内で農業経験を経て、その後、放牧酪農が主流のニュージーランドで4年間酪農を学び、帰国後2000年に新規就農で開設した牧場です。穀物主体で育てる日本の酪農スタイルに疑問を感じ、酪農の未来を見据えて本質的な放牧酪農に取り組んでいます。

日本酪農への問題提起

面積が限られる日本の酪農では、1頭当たりの搾乳量が多い、穀物主体で飼育する牛舎集中型の飼育方法が酪農家の9割を占めている、と言われています。
吉川さんが実践する放牧酪農とは、「牛の能力を最大限に生かしたい」という思いから、乳牛を牧草地で自由に放牧させ、穀物飼料に依存せず、たっぷり栄養を蓄えた牧草を主体で飼育する。農家にも、牛にも、環境にも優しい自然循環型の酪農。1年中自然に近い形で草原を自由に歩き回ったストレスのない牛は、人間が食べることが出来ない草を食べ、それを牛乳として還元する。そんな昔ながらの自然な形で搾乳された牛乳は、コク、うま味、甘味など美味しさや栄養度を数値化する官能検査でも高評価を獲得しています。 「見た目が白い牛乳でも、うちの牛乳は中身が違う、美味しい健康な牛乳」と胸を張る吉川さん。
そんな吉川さんの今の目標は「日本の酪農意識を変える」こと。穀物を極力使わない放牧酪農の良さを痛感しているからこそ、日本の酪農を変えていきたい!と熱い眼差しで未来を見据えています。

【ありがとう牧場】
住所:北海道足寄郡足寄町茂喜登牛98-4
お問合せ先:0156-26-2082
ありがとう牧場ホームページ

こだわりと愛情のこもったチーズ「しあわせチーズ工房」

2013年から「ありがとう牧場」の従業員としてチーズの製造・販売を担当してきた本間幸雄さんが、2016年に「しあわせチーズ工房」を独立・開業。
国産ナチュラルチーズコンクール“ジャパンチーズアワード2016”でハードタイプの「幸」が金賞を受賞。また、国際組織のギルド協会より国際的に優れたチーズ職人に贈られる「ギルド・デ・フロマジェ」の称号を叙任された。

チーズの美味しさを追求し北海道の放牧酪農の世界へ

もともと山梨県の乳製品会社でチーズ職人として従事するも、更なる味の向上を求めて、単身北海道へ渡ることを決意。美味しい生乳を求めて道内の放牧酪農家を訪ね歩きました。 数えきれないほどの牧場を訪ねてわかったことは、同じ放牧酪農でも牧場ごとに牛乳の味に違いがあること。当然、牛乳の味が違うとチーズの味も変わります。 この違いは放牧酪農家の考え方、飼い方、土地の個性などによって変化する、とのこと。
この旅の中で「ありがとう牧場」吉川さんと運命的な出会いを果たします。
「ここの牛乳なら自分が作りたいものが作れる」、「吉川さんの人柄、酪農に対する姿勢など」に強く共感。「ここだ!」という確信があったと本間さんは言います。
これを機に本間さんは、「ありがとう牧場」に住み込みで放牧酪農の勉強をスタート、2016年に「しあわせチーズ工房」として独立しました。
今では世界的な賞も受賞する程の本間さんは、「放牧酪農が盛んな足寄町で生産されたチーズを足寄町の食文化にしたい!」「ハチミツ味、キャラメル味など甘みが何種にも変わる魅力をもつチーズの素晴らしさをもっと知ってほしい!国産チーズの常識を変える!」といった大きな目標に向けて歩み続けています。

【しあわせチーズ工房】
住所:北海道足寄郡足寄町茂喜登牛141-4
お問合せ先:0156-26-2585

農業は創意工夫!毎年同じ年はない「党崎農場」

畑作専門農家を営む4代目オーナー党崎司さん。
主に、7品目(小麦、ビート、豆、芋、トウモロコシ、ふき、かぼちゃ)を主な作物として生産している。「農業は創意工夫のかたまり、その時の気候条件など毎年同じ年はない。“美味しかった”と言ってもらえる瞬間が一番うれしい!」と屈託のない笑顔で語ってくれました。

生産者の顔とお客さんの顔が見えるということ

国道241号線の通称「もろこし街道」沿いで、農作物の生産をしている党崎農場 。
十勝の東北部に位置する足寄町は、寒暖差の大きい気候により、糖分やでんぷん質の多い実の引き締まった作物が獲れる地域。この土地の特性を利用した農作物が代表的な作物となっている。特に、ジャガイモ、トウモロコシ、カボチャ、豆類などは一般消費者向けに直接販売も行っており。 初夏の収穫シーズンになれば国道241号線の通称「もろこし街道」は観光客や産直品を求めて訪れる人達で賑わいをみせます。
この直売所には、党崎さんの 生産者らしい思いが込められています。
「自分たちの手で丹精込めて育てた作物をより多くの人に食べてほしい、そのためには生産する品種も多くなり収穫コントロールはその分難しくもなる、生産者としての責任はもちろんあるが、お客さんと直接に繋がれる場所や機会があるということは、農業を行う上で大きなモチベーションだし、日々のやりがいとなっている」と話す党崎さん。 こんな熱い思いを抱きながら明日も日々の農業に邁進します。

【党崎農場 】
住所:北海道足寄郡足寄町中足寄91-8
お問合せ先:0156-25-5547
党崎農場 ホームページ

すべてはお客様の笑顔のために「足寄ひだまりファーム」

2008年から代表を務める沼田正俊さんは、福島県から開拓に入った農家の5代目。約40ヘクタールの敷地面積で、野菜生産の畑作業(トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、大豆など)と肉牛生産の畜産業の複合経営を行っています。 「家畜の糞を堆肥化して、有機物を土壌に還元することで、豊かな土壌が育ち、長年に渡って豊かな土壌農地を築き上げたい」と笑顔で話してくれました。
また、国産飼料米で育てたブランド牛「愛寄牛(あしょろうし)」の生産にも力を注いでいます。 北海道愛別町で家畜のエサとして作られるお米で、飼料を生産する人の顔がわかる安心・安全な飼料。飼料米の給与によって肉質が向上し、食味が大幅にアップ。第三者機関の研究所の分析では、その美味しさの向上が数値でも現れています。

「食で笑顔を作ること」

足寄ひだまりファームのモットーは、提供した食で会話が弾むこと、笑顔になること。 これに向けて作って終わりではなく、その品物がお客様の元へ届くところまでを想像して、生産から収穫後の品質管理を徹底しています。
例えば、ふるさと納税返礼品で提供する特産品に関しても、寄付者に少しでも喜んで頂けるよう、感動してもらえるようこだわりをもって生産し届けているそうです。
これは約35年前に、この土地で先駆け的に始まった直売所の存在が大きいといいます。 (畑作で生産するトウモロコシ、ジャガイモは直売所で全て完売してしまうほどの人気)
お客様と直接触れ合う機会が多かったこと、お客様から直接生の声を聞き続けてきたことが、今の経営方針の礎となっているそうです。 生産者でありながら消費者の立場で考える、生産者全員が「お客様の笑顔」をイメージし、日々の生産現場を「笑顔」で取り組むことを大事にし、 楽しく農業に取り組めるからいいモノが育める。「すべてはお客様の笑顔のために」、足寄ひだまりファームの沼田代表の真剣な眼差しがとても印象的でした。

【有限会社 足寄ひだまりファーム】
住所:北海道足寄郡足寄町螺湾84-2
お問合せ先:0156-29-7338
足寄ひだまりファームホームページ

町内で唯一の”ラワンぶき”専門農場「永井農場」

永井農場のオーナー永井研一さん。地元で一番の栽培面積を誇り、「ラワンぶき」専門の畑を20年以上家族で営んでいます。「ラワンぶき」と言えば、北海道遺産に選定されたとても希少価値の高い作物。 そんな「ラワンぶき」は一般的な「山ぶき」よりもアクが少なく、ミネラル・食物繊維が豊富な食材です。

「毎年楽しみにしている」そんな声に応えていくために

この「ラワンぶき」を20年以上育て続けた永井農場の「ラワンぶき」畑は、「根が地中にぎっしり張っており、毎年新しい芽が自然に生えてくるそうです。
他の野菜とは違って収穫後に土壌を耕す必要がなく、自然に近い状態で育てています。寒暖の差が大きい足寄の地で収穫された「ラワンぶき」はシャキシャキとした食感で、一度食べると普通のふきでは物足りなくなるほどです。
その食べ方も豊富で、漬物、煮つけ、味噌漬け、天ぷらなど多彩な料理方法があります。 特にオススメな食べ方は、天ぷらです。
「ラワンぶき」の旬は、限られた気候条件や環境条件でしか生産できないため、6月からの1か月弱と短い。 このため収穫時期を楽しみに全国から駆け付けるファンも多いといいます。直接販売も行っているため「このラワンぶきを食べたら普通のフキには戻れない。」「毎年楽しみにしている。」といったメッセージが届き、 そんな消費者からの喜びの声が一番の励みと、永井さんは満面の笑顔で答えてくれました。

【永井農場】
住所:北海道足寄郡足寄町中足寄28-2(農場)
お問合せ先:0156-25-6115(※農場:6月のみ対応)
0156-25-5435(※自宅)

「ばんえい競馬」の競走馬も生産する「後藤農場」

畑作農家として30年以上に渡りジャガイモ、トウモロコシを生産。 そして、帯広市が主催する公営競技「ばんえい競馬」の競走馬の生産者としての顔、またドライバーやバイカーの憩いとして「ラワン・ドライブイン・ふれあいファーム」を40年以上経営する3つの顔を持つユニークな経営を行っている後藤農場の後藤有弘さん。

太陽のような笑顔と優しさ

昔十勝エリアでは、馬の生産が盛んに行われていましたが、今では数える程度に減ってしまった「ばんえい競馬」の競走馬の生産者として、競走馬となる仔馬の生産を行っています。 過去には「ばんえい競馬」の頂点に立つ優勝馬がこの地から巣立っており、 特に雪解けした春先からは多くの観光客が馬の見学のためこの土地に訪れるとのこと。
畑作農家としては、1ヘクタールの敷地に、馬の排泄物を堆肥とし施す循環型の畑作を減農薬にこだわり実践しています。 ジャガイモ(男爵)、トウモロコシ(ハニーバンタム)を30年以上に渡り生産してきた、そのこだわりはとても強い。
ハニーバンタムという品種のトウモロコシを生産する農家がこの地域で減ってしまったとのことだが、糖度も高くて美味しい品種であり、綺麗な黄色、歯ごたえを感じられる人気の高いトウモロコシなのだそうです。
農場の敷地内には、直売所、ドライブイン内のレストラン、競走馬の生産現場も見学できる多目的スペーがあり、「訪れる多くの観光客との繋がりを大切にしている」と後藤さんは終始、柔和な笑顔を浮かべながらお話して下さいました。

【後藤農場】
住所:北海道足寄郡足寄町螺湾42-6
お問合せ先:0156-29-7302

畜産業の未来を見つめ革新を続ける「北十勝ファーム」

全国の有名な飲食店、一般個人の方など多くのファンを抱える北十勝ファームの短角牛。
この牧場を経営する上田金穂代表は次のように語ってくれました。「安心して口にでき、食べたとたんに笑顔になれるようおいしいお肉を生産すること。そんなお肉はきっと穏やかに健やかに育った牛のお肉です。人も牛も幸せにできる牧場でありたい。」そんな熱い思いを抱く上田さんに、牧場の特徴、今の日本の畜産業の課題、10年先の牧場のあるべき姿を語って頂きました。

食卓に笑顔を届けること

たくさんの思いやこだわりがつまった短角牛
まずは、その生産・出荷までの熱いこだわりをご紹介します。
1.99%以上国産原料で作られた飼料
2.牛たちの糞を利用した地域循環農業への取り組み
3.生育状況に合わせた独自の飼料配合率の研究
4.天然のナチュラルウォーターの使用
5.250haに及ぶ広大な牧場を利用した放牧と牧草の自給
※「北十勝ファーム」WEBサイトより抜粋
など生産過程において多数のこだわりを持ち、消費者の「笑顔」や「おいしい」を届けることに上田さんの熱い魂を感じずにはいられません。
また、昨今では国内ではほとんど行われていない牛肉の有機生産に取り組もうと、有機農法による肉牛生産を推進する「北海道オーガニックビーフ振興協議会」のメンバーとして新しい一歩を踏み出しているとのことです。
より自然で安全な飼育方法(アニマルウエルフェア)で生産し、食卓に笑顔を届けるために、畜産業の未来を見つめ、新しい取り組みや本来あるべき農法へチャレンジしていく姿に感銘を受けました。
このこだわりが詰まった短角牛の特徴を上田さんは次のように語ってくれました。「赤身肉には旨味成分のアミノ酸が多く、味や風味は絶品。短角牛の肉は霜降りになりにくい赤身肉で、健康志向の方にもお勧めです。黒毛和牛に比べ脂分が少なく、カロリーも低いため、中性脂肪や血糖値、コレステロールが気になる方でも安心して食べていただけます。また、脂っこい牛肉が苦手の方にもオススメできます。」とのこと。 是非ご賞味あれ!

【北十勝ファーム有限会社】
住所:北海道足寄郡足寄町美盛3-19
お問合せ先:0156-28-0021
北十勝ファームホーページ

羊飼いの未来を牽引する若きリーダー「石田めん羊牧場」

「石田めん羊牧場」は、新規就農で2001年に石田直久さんが妻の美希さんと二人で始めた足寄町の羊牧場です。最高品質を誇る「サウスダウン種」を主体に、独自の飼育方法と他品種との掛け合わせなど模索しながら、石田めん羊牧場独自ブランドの羊肉生産を行っています。また、羊から得られるあらゆるモノを商品化することで、余すことなく命を頂くという精神にもとづいて、羊のムートン、布団、羊乳、羊のチーズなどの商品を販売するほか、直営レストラン「ヒツジ堂」を経営しています。石田夫妻に、牧場経営に関してお話を聞きました。

チャレンジ精神に溢れる気鋭の羊飼い

国産羊肉の自給率は、たった4%。約16,000頭程度と言われています。ジンギスカンで有名な北海道でも国産羊肉はほぼ流通していないとのこと。石田めん羊牧場では、600頭弱の羊を飼育しており、最高品質を誇る「サウスダウン種」の純血種に力を入れています。「サウスダウン種」の純血種は、日本全国でも100頭弱しかおらず、そのうちの約80頭を飼育。一部の高級レストランでしか食べることが出来ない非常に希少な国産羊肉。その中でも最高品質の「サウスダウン種」にこだわる理由は、「断トツで美味しいから。脂、味、香りなど全ての面で最高級。目の厳しいシェフもはるばる農場まで足を運んでくれます。」と石田さん。しかし、このサウスダウン種は体が小さく飼育がとても難しく、特にお産にとても労力がかかり、出産シーズンになるとほぼ眠れない日が続くそうです。
それでも、「妥協なく自分たちが理想とする羊肉の生産を追求できる理由は、消費者からの生の声を聞けるから。全ての商品が消費者と直接取引をしており、どこまでも自分たちの目で確かめないと納得しません。顔の見える販売、直に声を聞くことができる関係を大切にします。」と石田さんに熱く語って頂きました。

【石田めん羊牧場】
住所:北海道足寄郡足寄町中矢7-1
お問合せ先:0156-25-6150
石田めん羊牧場ホームページ

メイドイン足寄の発信!安全・安心な食を届ける足寄町農業協同組合

畑作、酪農、肉用牛を基幹とした複合経営を行う足寄町農業協同組合。その中でもふるさと納税返礼品として大人気の「チーズ」、足寄町名産「ラワンぶき」などに関して、経済部部長の笠原さん、生産振興部部長の小笹さんにお話を聞きました。

世界も認めるチーズ職人「あしょろチーズ工房」

全国的にも珍しいJA直営の「チーズ工房」が「あしょろチーズ工房」です。
工房のチーズ職人でもあり工場長の鈴永寛さんは、2016年にフランスのギルド協会よりチーズの製造や普及に貢献したとして、「ギャルド・エ・ジュレ」の称号を叙任。世界33ヵ国に約6,500の会員がおり、国内の会員は100名でその中の1人として選ばれた名誉ある賞だ。そんな工場長が作るチーズは大変評判が良く、いまマスメディアなど多方面から注目を浴びています。
工房の特徴として、放牧酪農が盛んな足寄町の酪農家より1日平均1,800㎏ もの新鮮な生乳が届くこと。 そして、どういう人が生乳を生産しているかわかること、これが多様な種類のチーズを生産でき、手軽にチーズを食べてもらえる環境と繋がっています。
小規模工房よりも生産性が高く、大手では難しい手作りのこだわりが、JA直営ならではの魅力です。
その他にも、北海道遺産に選定された足寄町の名物「螺湾(らわん)ぶき」の加工品。また足寄町で生産される肉牛など魅力的な特産品を数多く生産しています。
その中でも名物の「螺湾(らわん)ぶき」は、収穫時期が限定されるため、収穫時の鮮度や旬を閉じ込め、全国的な普及を目指しています。北海道外へ長距離輸送を実現するために、 塩蔵処理した後に水煮状態にした商品を開発。“旬を閉じ込めた”より高品質な「螺湾(らわん)ぶき」の商品化に取り組み、全国への普及を目指しています。

【足寄町農業協同組合】
住所:北海道足寄郡足寄町南3条1-18
お問合せ先:0156-25-2131
足寄町農業協同組合ホームページ

次へ(3ページ目:名所・名産のリアル)

1.足寄町ガイド
~日本一広い町の魅力を紹介~

 

2.酪農・農畜産
~広大で緑豊かな大地が生むモノ~

 

3.名所・名産
~足寄で働く人々~

 

4.編集後記
~足寄町の愛情を「おすそわけ」~

 

おすすめ記事