現在キャンプ&アウトドアで頻出ワードの『男前』。無骨でワイルドなテイストを指し、もとを辿ればインテリアシーンから到来したトレンド。そんな男前が連呼される中、少し趣向の違う「ヴィンテージもの」を取り入れたキャンプスタイルが登場しつつあります。
“サファリ&ヴィンテージ”新しいキャンプスタイル
海外のアウトドアウェディングやピクニック界隈では以前からあったテイストで、グランピングにも世界観の近いそのスタイルは言うなればセルフな“サファリ”。
インテリアシーンのほか、ファッションや車、多方面で“価値”を求めてヴィンテージへの注目が集まる昨今。そんな潮流とリンクするように、キャンプ&アウトドアでもヴィンテージへ向くことはある意味必然の流れともいえそうです。本記事ではそんな新しいキャンプスタイルの世界観を“サファリ&ヴィンテージ”と定義。その特徴から作り方、楽しみ方まで網羅的に発信していきますよ。
“サファリ”ってそもそもなに?
「ヴィンテージは解るけどそもそも“サファリ”ってなに?」
サファリとは、1800年代後半から始まったヨーロッパ貴族によるアフリカでの狩猟ツアーのこと。狩猟といえば泥臭い世界を連想しがちですが、これを楽しみ広めたのは貴族たち。潜在的にリュクスな要素があるのがサファリ。ざっくり言うなら「こだわりある貴族たちがアウトドアでもかっこつけた野遊び」みたいな感じ。
あの希代の洒落者、ウィンザー公もサファリを愛した一人。アウトドアと縁深い作家ヘミングウェイのアイコンともいえる『サファリジャケット』もこのシーンが起源。一見ラフにカジュアルに見えるもののもとは貴族のフィールドウェアなのです。
ワイルドな野営とは異なり、ヨーロッパの文化と遊びを知り尽くした洒落者たちの趣向を満たす幕営地が用意されました。アフリカの草原とクラシックで価値ある調度品、双方の韻を踏むアースカラーでまとめられているのが特徴的。“ただの贅沢”というよりは“こだわりの世界”がアフリカで形づくられています。
時には一流シェフを原野に同行させた貴族たちの大スケールな華麗なる野遊び。現在でもアフリカではその名残のサファリツアーやアウトドアホテルが存在します。またキャンプ&アウトドアシーンよりも上のレイヤーでも話題のグランピングもその源流を辿ればここに帰ります。
時代によってはいろいろ怒られそうな贅沢感もありますが、“時を超えて価値を愛でる”という時流から許容できる方向に向いてきたのかも?
よりインテリアに親和性の高いキャンプスタイル
キャンプの盛り上がりと共に、最近では自宅インテリアでもアウトドアギアを使うユーザーが増加中。サファリ&ヴィンテージで使う古道具や同ムードのギアはこれまで以上にインテリアに親和性抜群。
インテリアシーンでいうところの“ブルックリン”や“インダストリアル”の流れをくむ『男前』とは違った世界観で、エレガントな世界観にも好相性でユニセックスに愛せる道具たち。ということは、サファリ&ヴィンテージなギアなら道具を増やしてもパートナーや家族に怒られない可能性大?かどうかは解りませんが少なくとも自宅のインテリアとしてより使いやすい道具が多いことは確かです。
モチーフとサイトコーデのヒント
サファリ&ヴィンテージなキャンプサイトを作る基本は、ベースとなる幕の世界観とヴィンテージ小物(古道具)の配置。高価なヴィンテージアウトドアギアは無くてもOK。決して「レジェンドギア」等と呼ばれるお宝を集めなくちゃダメという難易度の高いスタイルではありません。むしろすでに価値が認められたギアを競うように揃えても行きつくところは「被り」。
自分で価値を見出した古道具を活用することもこのスタイルの醍醐味の一つ。キャンパーの個性から時代や国へのこだわりまで、重層的で多面的な道具選びができるのでキャンプサイトの幅が広がります。ベースとなる幕だけ、サファリモチーフを連想させる「草原とクラシックな調度の韻を踏む」ような帆布の白、オリーブやベージュといったカラーを抑えるところから始めます。
あとは国も時代も超える無限の古道具を合わせ、独自の世界を追及できる遊び。もちろんその先で、独創的な幕でムードあるサイトを作ることも楽しそう。
ギアの入手方法
サファリ&ヴィンテージを楽しむ上でポイントとなるのがギアの入手方法。同時に大きな楽しみの一つ。通常のアウトドアショップだけでは揃いません。だからこそ探しがいがあって、個性とセンスもフル稼働。サファリ&ヴィンテージの世界、ギア入手からもうアクティビティ。
『蚤の市』でギアハント
最もエキサイティングでアクティビティ感高い入手方法が『蚤の市』でのギアハント。インテリアシーンでの盛り上がりから、現在各地でマニア向けではないエントリー層でも楽しめる古道具マーケットが開催されています。
例えば私の住むエリアなら、湘南T-SITEで毎月『湘南蚤の市』が開催されています。こちらのマーケットは「南仏」がテーマ。骨董をちゃんと定義していくと「アンティークと呼べる品は100年以上前」のような細かい話になるのですが、『湘南蚤の市』はトレンドでもある親しみやすい“ブロカント”がメイン。
以前DIY記事でも触れましたが、ブロカントとはフランスの比較的近年のカジュアルな古道具のこと。高価なプレミアムがついた品ではなく、気軽に日常使いできる実用的な道具たち。「収集」というよりは「インテリアで使う」たのめのいうなれば即戦力たちです。しかも南仏とはいいながらもスイスや英国の道具、オールドニコンなんかも発見できる雑多で懐深いマーケットなんです。
雑貨店めぐり感覚で楽しめるので「骨董の知識が無い」という方にこそ蚤の市はおすすめ。価格は安価だけれど、“私にとってはお宝”な運命のモノに出会えるかも。
湘南蚤の市
https://ja-jp.facebook.com/SHONAN.NOMINOICHI/
ヴィンテージ専門ショップを掘る
アンティークショップというと価格が高く、価値基準を知らないと利用しづらい敷居の高さを感じる方も多いと思います。それがキャンプ&アウトドアシーンに限定するなら、もっと気軽に利用できる専門ショップが存在します。アンティークショップよりもリーズナブルな品が多く、アウトドアで使える範囲の道具たちなので価値も把握しやすいフィールド。
別記事でもご登場いただいている『ビブラント(VIBLANT)』はその代表的なショップ。とくにビブラントは貴重な品があるにもかかわらずとってもカジュアル。一見ワイルドなボスの石角さんも超気さく、初心者でも安心してのぞけます。
VIBLANT 東京
https://www.viblant.com/
VIBLANT x NATURETONES 名古屋
https://www.viblant.com/nogoya
ムードがマッチする現行ギアをセレクト
古道具とは異なるものの、世界観がマッチするオリジナルギアを発信しているブランドもあります。例えば都内ではCAMP on PARADEやINOUT等が狙い目のショップ。サファリやヴィンテージな世界観に違和感なくハマリ、自宅インテリアでも雑貨として使えるギアが多数。CAMP on PARADEはオリジナルのアウトドアチェアやゆったりとした木の器から、ヴィンテージランプにいたるまで幅広く統一した世界観のアイテムを展開。
INOUTはいち早く「インテリア×アウトドア」なオリジナルアイテムを発信。インテリアショップと言い切ってもいい店内には“タイトル回収”な部屋でも野外でも空間を上質に演出してくれる家具や雑貨が並びます。
いずれもインテリアショップ、雑貨店感覚でキャンプやアウトドアに興味の無い同行者を連れて行っても喜ばれるお店です。
CAMP on PARADE
https://www.camponparade.com/
INOUT
https://inout.tokyo/
ヴィテージテントでリュクスを追及してもよし
とことんヴィテージを突き詰めたくなれば、ヴィンテージテントという世界も存在します。国内で豊富にヴィンテージテントを扱っているのが静岡県静岡市のシャトーキャンプ。
こちらはフランスアンティークショップのボンコテが手がけている本格派ヴィンテージテントショップ。時代に左右されない、時を超えてきた名テントたちは間違いなく一生ものです。
CHATEAU CAMP(シャトーキャンプ)
http://chateau-camp.net/
サファリ&ヴィンテージでライフスタイルも豊かに
出典:Ajigomi
「価値を求めて失われた時を消費する」
現在ではありえないほどコストをかけて贅沢に作られたヴィンテージカー。レプリカでは醸せないレトロムードをまとう一点ものの古着。新品の何倍もする価格でも即ソールドアウトとなるクラシックな家具。ある種のロストテクノロジーと希少性、はたまた未知への憧れかある時代への回顧か。さまざまな理由から「失われた時」に秘められた価値が消費されています。
ヴィンテージの価値が多くのカルチャーで再評価される現在。90年代以前の中古車価格の異常な高騰とか面倒な部分がありつつも、価値あるものが認められ、再び道具たちが活躍し、人の暮らしを豊かにすることは素敵。近い関係になりつつあるアウトドアとインテリア、サファリ&ヴィンテージでは両者がさらにクロスオーバーしていくはず。インテリアサイドから来る新たなキャンパーも増えるでしょう、キャンプシーンから進化する個性派キャンパーも増えるでしょう。
セックスレスにエイジレスにライフスタイルまで豊かにする可能性を秘めたサファリ&ヴィンテージの世界、ベテランキャンパーの方もキャンプ未経験の方も楽しんでみませんか。