千葉県に大きな爪跡を残した台風15号。
筆者も千葉県民であり、房総各地のキャンプ場さんのオーナーさんたちの顔が浮かび、どうされていらっしゃるのかが本当に心配でした。でも考えていてもしょうがない。
何よりも動くことが先。電気や水道、交通の整備がかなり進んだ被災から2週間後、廻れるだけのキャンプ場(久留里、君津、白浜、鴨川、香取)へ行ってみることにしました。するとそこには被災そのものではない苦悩が。
自然の猛威を目の当たりに
最初に訪れたのは県の内陸地「久留里」。風圧で折れ曲がった看板。
ビニールは飛ばされ骨組みが曲がったビニールハウス。
多数のブルーシートの屋根。これらはその後向かう房総一帯、特に内房、房総半島突端の地域に数多くみられ、その惨状には心痛みます。
ただ懸命な復旧のおかげで、生活圏での道路不通はかなりの場所で解消されていました。
活気あるキャンプがそこにはあった!
かずさオートキャンプ場。川沿いの樹木が風でなぎ倒されていたものの、場内は目立った被災はなく、キャンプ場自体は活気を取り戻し始めています!この姿は本当にうれしかった!
イレブンオートキャンプパーク。まず最初の光景に驚きました。受付が混んでいるのです!そして全面が埋まってはいないものの、ほぼ日常通りの秋キャンプが場内で展開されています。よかった。設備を含めて目立った被災はないようです。
「求む!話し相手!?」オーナーは元気です
ホウリーウッズ久留里キャンプ村。開業当時から見てきた馴染みある看板が倒れてしまったことにショックを覚えました。
聖なる森の名前の通り美しい樹林が特徴のこのキャンプ場。残念ながら倒木の被害には遭われています。
サイトの一部分にも倒木が。しかしそれは一部分です。キャンプが可能な場所は8割も確保できているのです。この写真にもある通りキャンプをされていらっしゃる方はちゃんといます。被災イコール全面閉鎖ではないこと、まずはこの事実を知らなければ。
ホウリーウッズ久留里キャンプ村オーナー藤平さん。
「たしかに作業は大変です。しかし倒れるものはその運命にあったと考えます。今回は自然の力によって淘汰されたんだ、そう思って納得していますよ。キャンプ場を見直す良い機会なのかもしれません。それよりもみなさん来てください!話し相手がいてくれた方が、かえって復旧作業の力になるし気晴らしになるんです。求む!話し相手!(笑)」
とにかくびっくりしたのが、この後に会うオーナーさんたちみなさんすごく元気でなのです!復旧に尽力しながらもこの笑顔だし、とてもとても前向きなんです。
「だってふさいでいたって仕方ないでしょ。そんなことより先が大事。キャンプ場が無くなったわけじゃないんだから。みなさんが来てくれなければ始まらない!キャンパーのみなさんでこの森を埋めてほしい」
キャンプ場は変わっていくもの
久留里から隣町の君津へ。キャンプ場が続く千葉のキャンプ銀座ともいわれます。
まずは、柿山田オートキャンプガーデンへ。
一部には倒木の被害。それよりも休業をせざるを得ない原因は停電がなかなか復旧できなかったこと。
この日すでに通電し、水道も復旧。このキャンプ場の大ファンでもあるボランティアさんが最後の場内整理をされていました。再開までもうあと一歩です。
※再開の情報はHPでご確認ください
http://www.kakiyamada-autocamp.hello-net.info/
初代オーナーの作本さん(現在息子さんが二代目)
「何十年もキャンプ場をやっていると”表情”は変わっていくものです。台風が木を倒したのもそれは自然なのだからこそ。こういうことがあってもキャンプ場をやる使命感は何も変わりやしませんよ。それで今までやってきたし、これからもそう。お客さんが待っててくれますからね」
数年前川の増水で大きなダメージから復活を経験された作本さんだからこその力強い言葉です。そしてこの笑顔。自然と共に歩んできたキャンプ場オーナーさんたちの心の広さには心底驚かされます。
花はなの里オートキャンプ場。「ウチは自分たちがビックリするくらい何もなかったのよ」と奥様の麻里子さん。ご主人によるとどうも地形と風向きの関係ではないかということで、確かに場所により被災の差があるはこの要因が大きいかもしれません。
「被災をしたと思ってすぐに救援物資を運んでくれた馴染みのキャンパーさんがたくさんいてくれたの。実際には被災はなかったけどその気持ちはとてもうれしかったわ」
※その物資は困られている近所におすそ分けされたそうです。
花はなの里といえば放し飼いのニャンコとワンコ。25匹のニャンコたちも7匹のワンコたちみな無事で元気。よかった!
きっと山の非日常界は復活する、そう信じたい
しかし被害が甚大だったのがフォレストパーティ峰山。
このキャンプ場は「非日常の世界へのタイムトンネル」と称するユニークな山道で頂上まで登っていくのですが、ご覧の通り道脇の木がめくり上がってしまうほどになってしまっていました。掲載するのさえ躊躇いましたが、現オーナーさんが「現状をそのまま伝えて欲しい」とのことなのでそのままご報告します。
数か所の滑落。現在はまだ処置ができていませんが、復旧に充分な望みがあることだけは皆様にお伝えします。※この日は山頂までは歩いて登りました。
山の上で待っていてくれたのはニャ太郎!ありがとう!会えて嬉しかった!
ヤギのフジコたちも無事。よかった!
これが台風15号のすさまじい力です。山道の被害は甚大ですが幸いにも山頂の施設やサイトはほぼ被害がありません。だからこそ復活への道が断たれたわけではなく、二代目ご夫婦が、ディズニーランド創成期を支えた先代小川さんの夢を引き継いてくれるでしょう。私はそう信じていますし、応援していきます!
現場は頑張っている
これは是非報告したいこと。何台も何台も何台も東電の車に会いました。しかも遠くからの支援が多数でした。
オーナーさんたちも口を揃えて「どれだけ一所懸命にされておられたか・・本当に頭が下がる思いだ。電気が復旧してテレビを見たら東電が悪者扱いになっていることに驚いている」という趣旨のことをおっしゃっています。
私たちは報道や報道の解説の一面的なものに振り回されて真の姿を見失っていないだろうか、そう思えたのです。
道路も各所きれいに片付いているのです。驚くほど。2週間あまりで行政も自治体も民間も、ここまでよく出来たなと実感しました。
対応の遅さを報道等で指摘されてはいますが、もしかしたらそれは一面的な見方が吹聴され過ぎているのではないかと自分の目で見て思ったのです。
全然平気っスよ!それよりもみんな来て!
君津から館山道を50kmほど南下、館山の市街地を抜けて南房総市へ。この惨状を目の当たりにすると心痛みます。
そういう意味でも場所柄一番気がかりだったのが白浜フラワーパーク。ところが幸いなことに被害は最小限。むしろキャンプサイトでいえば全くの無事です。
管理人のヨネくん。「こんなの全然平気っスよ!2年前に比べたら」本当はそんなことはないのでしょうが、明るい彼は常に前向きなのです。
帰るお客さんとあいさつを交わすヨネくん。「また来るよ!」「うん、でも無理しなくていいからね!いいときにきて楽しんでいって」そう、彼の最大の武器はその自然体。そして芯の強さ。
「本当の被災者はお年寄りたち。僕ら若者がそんな被災者面しちゃいけない。僕らが頑張ってお年寄りたちを支えてあげなきゃ」彼が持っているのは被災地域への募金箱です。
そして最後に「がら空きのサイトはさびしい!来て!みなさん。フツーにキャンプしに来て!」
今が一番キャンプ場がきれい!
房総を走ること250km。すっかり夜になってしまってからの訪問になってしまったのはキャンピングヒルズ鴨川。迎えてくださったのはオーナーの椎野慎自さん。
「あの日の夜はすごく怖くて、命の危険さえ感じました。眠れない中うとうとしていたらキャンプ場が崩壊する夢を見てしまったのです。ハッと目が覚めるといつの間にか夜明け。すっ飛んで外を見回りしたら確かに見たことがないくらいに荒れてはいましたが、どうにもならないほどではなかった。そうしたら急に”生きていただけめっけもの”そういう心境になったのです。そうしたらがぜんやる気が出て、片づけがもう楽しくなっちゃって(笑)。今はへとへとだけどかえって場内のいいクリーンナップができたと気持ちがすっかり切り替わりました。今までで一番キャンプ場がきれいかも。この整備された今こそ一番きて欲しいんです!」
伺うことができなかった大原オートキャンプインそとぼうの三原オーナーに電話で聞いてみました。
「日に日に自粛ムードが高まっています。台風直後の先週の三連休より、今週のがキャンセルが多くなってしまった。ウチは被災すら受けていないのに。遠慮せず遊んで、出来たら近隣にお金を落としてくれたらなお嬉しいです」
千葉に行くことが最大の復興支援
そうなんです。誰一人オーナーさんはキャンパーさんの自粛行動を望んでいません。キャンプ場の台風による外的被災なんかより、「自粛ムード」と「自粛キャンセル」こそキャンプ場にとっての甚大な被災なのです。
来ていただくのにボランティア活動も望んでいないし、同情や遠慮なんかまるでいらない。支援物資ももちろん考えなくて大丈夫。
「なんでもない」感じで以前と同じに来てもらえるのがキャンプ場にとって一番嬉しく有難いこと。
再開された、これから再開する房総のキャンプ場さんに、ただただ行くことが最大の復興支援となるのです。
グランピング施設が抱える「自粛ダメージ」
一方北部も気になり、香取にあるTHE FARMさんへ伺いました。やはりそこにも被災そのものではなく「自粛ダメージ」という現状があったのです。
15号通過直後は、停電、一部の倒壊など施設への被災はあったものの、従業員の皆さんの尽力でそれらの復旧は比較的早くできたということ。
「みんな、自分の家のこともあったはずなのに、こんな時だからこそと全員が集まって乗り切ろうと結束できたのは、被災ではあったものの、ある意味一つの転機にさえなったかもしれません」と田山さん。
復旧の努力の甲斐あって、2回の3連休、全ての施設は問題なく稼働していました。しかし・・・実際はキャンセル連絡の連続。「被災を乗り越えていざこれからと思っていた矢先、「自粛」という意外なものに阻まれるとは思ってませんでした」と武田社長。
「キャンセルをされる皆さんの気持ちはよくわかります。みなさん私たちのことや千葉のことを気にかけてくださっての敢えてのキャンセルで、キャンセル理由として頂戴したメッセージからそれが伝わってきます。それだけに私たちとしてもそれ以上何も言えないジレンマが・・・」と田山さんがスタッフ全員の気持ちを代弁してくれました。
それでも「こんな時だからこそ来たよ!」という方々は少なくなく、
「最初はこんなときに行ってもいいのかなと思ったのは確かです。でも実際に来てみたらスタッフはとても明るく迎えてくれるし、いつもと全然変わらなくとても楽しく時間を過ごしています。来てよかったです」とご家族で来られた方の声。
キャンパーが立ち上がり、自粛という見えない被害を払拭しよう!
房総南部を回った時に各オーナーさんも
「自粛というお気持ちはよくわかります。私たちへの気遣いとしてこんな時に遊んでもいいのかと。それは優しくありがたい気持ちとして受け取っています。でも、正直言えば私たちにとって経済活動が止まることこそ本当の被害であり、この先の大きな不安なのです。どうかみなさんの笑顔で私たちを勇気づけてください」
と全員ぶれることなく同じ言葉を発されていました。
キャンプはもちろん、特にグランピングは、被災との相関関係からどうしても気が引けてしまうのはよく解ります。
日本人のもつ、優しく生真面目な心情からして。私だって足を運ぶまではその気持ちを払しょくできませんでした。毎日テレビでは被災の状況が報じられ、生活がままならない住民の皆さんがいらっしゃることは間違いない事実です。
いっぽうですべてが機能不全になっているわけではなく、日常を取り戻そうとしている努力に協調していかなければ目に見えない被災がこれからどんどん広がっていってしまいます。そのことを私たちは2011年に学んだはず。
行って現状を見るということも意義深いと思います。私も実際に見たものが報じられたもの違うという差を感じました。もちろんその通りだったということも含めて。
ここは気持ちを切り替え「経済活動を支えるボランティア」なんだとむしろ割り切りって、もっと千葉県に日常を取り戻してもらおうという気持ちのもと、千葉へ行ってみませんか!現地は「来てほしい」の気持ちでいっぱいです。
秋の澄んだ空気で、THE FARMでは見上げると天の川まで見えました!
秋だからそ、キャンプ、グランピングのいい季節到来ですよ!
気遣いの優しい気持ちを大切にしながら、自粛ムードをなんとか払拭しましょう!
これからでもキャンセル復活はできます!新規もできます!