長野県小谷村は人口3,000人にも満たない小さな山間の村。
そんな小さな村に“ふるさと納税寄附者”と“住民”が交流をするイベントが定期的に開催されています。
2019年からLANTERNが運営サポートをしている長野県小谷村の「雨飾高原キャンプ場」でも2019年11月に『おたりdeキャンプ vol.2』という、ふるさと納税寄付者を集めたファンミーティング型のキャンプイベントが開催されました。
なぜこのような「ファンミーティング」を定期的に開催するのか?
【ファンミーティングで未来を創る】を掲げる小谷村役場企画財政係のみなさんに、その目的や今後の展開などを詳しく聞いてみました。
人口3,000人に満たない長野県の自治体。妙高戸隠連山と中部山岳国立公園という2つの国立公園が存在し、日本百名山の1つ「雨飾山」を有する。
豪雪地帯として知られ冬はスキーやスノーボード、夏はキャンプや登山、トレッキングなどの自然体験を中心としたアクティビティが充実しています。
『応援していただいた方と会いたい』がきっかけではじまったファンミーティング
編集部
なぜファンミーティングを始めたんですか?
千國さん
より小谷村を知っていただくために『実際に会う』という機会を作りたいと始めました。
丸山さん
小谷村は、長野県と新潟県の県境にあり、スキーなどウインターシーズンが観光業の柱です。しかし、スキー離れが進みバブル時代をピークに下降トレンドに入ったまま抜け出せていません。
千國さん
ふるさと納税を活用し、11年間(2008年~2018年)で約160,000件の方々から寄附をいただきました。2017年に寄附者の方々にアンケート調査をおこなったところ、3人のうち2人が『ふるさと納税で初めて小谷村を知った』という回答でした。そこで私たちは、より小谷村を知っていただくために『実際に会う』という機会をつくろう!とはじめたのがファンミーティングです。
過去に開催したファンミーティングの様子
【ウインターシーズン(11月ー5月)】
村内にあるスキー場でスキーやスノーボードをしたり、かまくら体験やかんじき体験などを企画。
写真は、かんじき体験後に小谷村が誇る「パウダースノー」に飛び込んでいく子どもたち。
・第1回白馬コルチナスキー場
・第2回白馬乗鞍スキー場
・第3回栂池高原スキー場
【グリーンシーズン(6月ー10月)】
雨飾高原でキャンプや栂池自然園で散策・星空観察会、きのこ狩りなど里山体験などの企画を開催。
写真は、里山に入り、みんな黙々ときのこ狩りをする子どもたちの様子。
・第4回雨飾高原キャンプ場『おたりdeキャンプ』
・第5回栂池自然園
・第6回里山体験
参加者233名(2018年実績)の声が気付きを生む
栗田さん
「ほとんどの参加者が『初めて小谷村に来た』という方々です。参加する前までのイメージや実体験をしてみた感想などをもとに、『こんなことを体験したい!』『もっとこうするのは?』などディスカッションをしていきます。
千國さん
参加者が実際に体験した感想をもとに、課題や観光・移住・サービスなどの課題を洗い出していきます。2018年にファンミーティングに参加した方々は計233名。皆さまから出てくる意見はとても鋭く、色々な気付きが生まれます。村内に住む人の『当たり前』が、参加者にとっては当たり前ではなく『魅力的なもの』だったり、逆にセールスポイントが思いのほか低評価だったりします(笑)。
見えた方向性 グリーンシーズン×キャンプで感じた手応え
写真は過去開催した中で、2018年7月に開催した第4回雨飾高原キャンプ場『おたりdeキャンプ』は、アウトドアメーカー「コールマンジャパン株式会社」の協力で実行できた初めてのキャンプイベント。
小谷村の「食」や「文化」、「自然」を体験すること+村民との交流をテーマに24組101名が参加。
あっという間になくなった「味噌きゅうり」で気付く
千國さん
もぎたてのきゅうりを子どもたちが美味しそうに食べてる姿に、『あぁ、こういうことなんだ』と感じました。
丸山さん
特別に手の込んだ料理などがなくとも、参加者が楽しんでくれると気付いた瞬間でしたね。
栗田さん
参加者と一緒に『小谷のお酒』を飲みながら、フラットに意見交換した夜は、今までのディスカッションよりも深く熱く、手応えを感じるものでした。
見えた方向性「村民には当たり前が、参加者には非日常体験」
<参加者からいただいた声>
スタッフの皆様のおかげで、無事に安全に過ごすことができましたし、また、特に子供にとってはプロフェッショナルのスタッフの方々と会話したり一緒に体験したりすることが、本当に楽しかったようです。(中略)皆様にはいろいろとご迷惑をおかけしてしまいすいませんでした。一参加者としては本当に素晴らしい企画だと思いました。どうもありがとうございました。
帰りの車の中で、子供たちが今までの旅行の中で一番楽しかったと言ってました。
今日の朝でさえ、「昨日保育園の先生にいっぱい話したんだー」と楽しそうに話してくれました。小谷村のみなさんとコールマンさんのみなさんの当日までの見えない努力を思うと、本当に素晴らしいイベントであったと感じています。
丸山さん
参加者の感想を見て非日常体験はすぐそこに、村内に当たり前のようにあるんだと改めて感じました。
栗田さん
多くの方からいただいた喜びの声をさらにブラッシュアップすることで、進むべき方向性が見えました。
千國さん
小谷村が持つ『自然』を多くの方々に知ってもらい、『体験』していただきたい。さらに村で暮らす人々と交流を生むことが付加価値となり、差別化された観光コンテンツになると確信しました。
子どもたちの自然体験+地元との交流
写真は「おたりdeキャンプvol.2」の一幕。水を計量し、蕎麦をこねる兄妹の様子が微笑ましいですね。
小谷村の「当たり前=日常」を知ってもらうことが非日常
栗田さん
119組から応募をいただき、抽選で30組120名の方々が参加した『おたりdeキャンプ vol.2』を2019年11月に開催しました。テーマを「食と交流」とし、約30名の地元住民も参加しワークショップの講師になり、前回よりも小谷村の当たり前をコンテンツにした企画を増やしました。
ワークショップは地元のお母さんが教える「田舎料理体験」や「蕎麦打ち体験」をはじめ、丸太にチェーンソーで切れ目をいれていくスウェーデントーチ作りなどを開催。
小谷村で採れた食材を振る舞う『おたりdeナイト』。おたりジビエカレー・熊汁・焼き鳥・田舎惣菜など地元の食材を使ったメニューを用意。参加者の方々と地元の村民が交流し、色々な話を楽しくすることができました。
「元気をもらった」と地元住民が笑顔で話す
丸山さん
地元のお母さんたちが、すごく笑いながら参加者と交流していたのが印象的だったね。
栗田さん
ホントそうですよね。『なんか逆に元気もらちゃったわ』と話されていて、企画して良かったなって思いました。
取り組みに賛同していただいた企業が増加
千國さん
子どもたちに自然体験機会を創出するきっかけ作りとして、多くの企業が賛同し協力していただきました。やはり、行政だけだと出来ないアイディアやサポートがあったことで参加者の満足度をあげることが出来たと思います。
参加者全員が「また来たい!」と言ってくれた
おたりdeキャンプvol.2終了後に参加者の居住地、小谷村までの片道の時間などアンケートを回収しました。遠くは兵庫県から車で9時間かけて小谷村まで来たとのこと。平均でも約6時間と簡単な道のりではない中でたくさんの方が来てくれました。
↓約9割の参加者が「ふるさと納税」をきっかけに「小谷村」を知った。
↓約2割の参加者は、「ふるさと納税」で小谷村を知ったあとに来村。
↓アンケート回答者全員がまた来たい!と回答。
参加者からの声(抜粋)
もう少し温かい時期だと良かった。でも夜空が綺麗だったので満足です!トータルではとても楽しく良い体験になりました。ありがとうございました。
10月開催希望。おやきを作ってみたい
下界が猛暑の時に、避暑に来たいです
『おたりdeキャンプ vol.2』アンケート結果を来年に活かす
千國さん
私たちのファンミーティングをきっかけで、来村された方が約8割いらっしゃいました。その方々の全てが『また来たい!』と思っていただき嬉しい限りです。また、参加者の方々から頂戴したアドバイスを行政がどう活かしていくか、が重要だと考えています。
丸山さん
ふるさと納税で『小谷村』を知っていただいた方が全体の約9割。縁あって知っていただいた方を大切にし、コミュニケーションをもっと図っていきたいです。この取り組みを続け、参加していただいた方にとって小谷村が『第二の田舎』になれたら最高です。
栗田さん
私たちにとって村外に住む方の意見は本当に貴重です。ふるさと納税をきっかけに出会うことができ、ちょっとでも『小谷村』のことを気にしてくれたら嬉しいです。自然体験の提供だけでなく地元との交流を促進していきたいです。
編集後記
小谷村は、長野県と新潟県の県境にある、雪と緑が美しい自然豊かな人口3,000人弱の村。
村の西側は、雄大な北アルプス。東側は昔懐かしい里山風景が現存しています。
ふるさと納税寄附者との交流『ファンミーティング』が、村の認知向上だけでなく村の活力にも変換され始め、田舎を都会に近づける観光戦略ではなく、応援者の意見に耳を傾け都会にはない田舎の魅力とサービス力をあげていく小谷村の姿勢は、とても挑戦的かつ魅力的に感じました。
情報発信にも注力をし、LINE@を活用した定期的なアプローチでファンとの距離を保ちながら、時代に合わせた情報発信の取り組みも進めています。
時代に合わせるところは合わせ、磨くところは磨き、見直すところは見直す。寄附者との交流が生んだ小谷村の戦略と言えます。
ふるさと納税のその次。リアルに出会うファンミーティングが、小谷村のコアファンを生み、関係人口の創出に繋がると考えると面白い取り組みだと改めて思いました。