北海やバルト海で獲れる魚介類や、森で採れるベリーにキノコとパンに肉類、乳製品やパン、ジャガイモなどを使って作られる北欧料理。
ハーブや塩胡椒でシンプルに味付けする北欧料理は、日本でも普及しはじめていて、北欧発祥のオープンサンド「smørrebrød(スモーブロー)」などが人気になりつつあります。
シンプルで可愛いデザインの食器や雑貨に囲まれて、太陽の下でご飯を食べるのが大好きな北欧の人々。今回はそんな北欧の雰囲気を楽しめる、日本でも手に入る食材を使ってキャンプで簡単に作れる北欧ごはんのレシピを2つ紹介します。
デンマークご飯「snobrød(スノブロー)」
デンマークの人は焚き火が大好きで、庭やハイキングコースなど、あちこちに焚き火スペースが設けられています。独特の文化Hygge(ヒュッゲ)を焚き火の側で楽しむ人も多く、焚き火Hyggeの定番料理が、このsnobrød(スノブロー)。
brød(ブロー)はデンマーク語でパンを意味し、英訳ではBonfire stick bread、日本語に直すと「焚き火パン」になります。
※Hygge(ヒュッゲ):デンマーク語でお気に入りのモノに囲まれて、親しい人達と過ごすリラックスした時間のこと。定義は少し曖昧。
材料(3~4人分)
下準備(生地作り)
1.バターを弱火で溶かして火から下ろし、牛乳とドライイーストを混ぜる
2.薄力粉、強力粉、砂糖、塩をふるいながら少しずつ加えて混ぜる
3.テーブルなどにオリーブオイルを塗り、その上に生地をのせてよくこねる
4.ボールに薄くオリーブオイルを塗り、生地を入れてラップをかける
5.常温で1時間、もしくは冷蔵庫で10時間発酵させる
キャンプ場でパン生地を作ってもいいですが、キャンプ前日の夜に生地を準備しておくと時短になります。
一晩冷蔵庫で発酵させ、当日は生地をクーラーボックスなどに入れて持っていけば、キャンプ場ですぐにパンを焼けます。
作り方
1.火おこしをして焚き火の準備をしておく
2.生地を8-10等分して15-20cmほどの長さに伸ばし、棒に巻きつける
※好きな分だけ生地をちぎってもOK。生地が太かったり、分厚くなってしまうと中まで火が通らないので注意が必要。
3.パン生地を火に近づけてじっくり焼く
※炎が上がっている所で焼くと焦げるので、熾火になっている箇所や、炎から少し離して焼いて下さい(焼きマシュマロと同じ要領)
4.出来上がったらパンを棒から引き抜く。生地が中まで焼けていれば棒をスルッと外せます。
デンマークは、北欧の国々の中でも酪農が盛んで、チーズなどの乳製品や豚肉が名産。パン生地を巻きつける前にソーセージを棒に挿して、その上からパン生地を巻きつけたり、パン生地の合間にチーズを挟み込むアレンジレシピも人気です。
焼き上がったパンはそのまま食べてもいいですが、好みに合わせてジャムやバター、カッテージチーズなどのトッピングを添えて食べても美味しいです。
棒は、そこら辺に落ちてる枝をナイフで削って作ったり、あらかじめ準備しておいたりと様々です。白樺の木の枝を使うと独特の風味になって美味しいとのこと。日本だと桜の木の枝を使うと良いかもしれません。
火傷を防ぐため、パン生地の端から手までは15cm以上離せるような長さの木の棒を準備しておくのがお勧めです。
スノブローで贅沢な時間を
焚き火Hyggeの定番料理が、このsnobrød(スノブロー)。デンマークの友人に「焚き火しよう」と言うと、いそいそとパン生地を準備してくれることが多いです。
パン生地作りに不慣れな私は、もっぱらコーヒーや紅茶、コップ、焚き火用の薪を準備をしておき、その間に友人はパン生地を作ってくれました。
焚き火にあたって、コーヒーを飲みながら生地が発酵するのを待って、できたらワイワイ言いながらパンを焼く。日本のキャンプでも、パン生地を準備して焚き火をおこせば、そんなHyggeな時間を楽しめます。
自然に囲まれて綺麗な景色を眺め、パチパチと焚き火の音を聴きながらお喋りを楽しみ、美味しいデンマークの焚き火パンsnobrødを作って食べる。そんな贅沢な時間を過ごしてみませんか。
スウェーデンのおもてなし料理「ヤンソンさんの誘惑」
バルト海が近く魚介類がよく食べられるスウェーデン。他の北欧の国々と同じく、ジャガイモやライ麦パンが主食に食べられています。
「ヤンソンさんの誘惑(Janssons frestelse:ヤンソンス フレステルセ)」は、ジャガイモとアンチョビのクリーミーグラタンのこと。スウェーデンの代表的な家庭料理で、ホームパーティやクリスマス料理に欠かせないメニューです。
このユニークな名前のグラタン、諸説ありますが「菜食主義のヤンソンさんが思わず食べてしまうほど美味しい料理」という説が一番有名です。
材料(3~4人分)
下準備
1.ジャガイモは皮を剥き、細切りにしておく。
2.玉ねぎは細かいくし切りに
※家で切った野菜をジップロックやタッパーに入れて持って行くと、キャンプ場で調理の手間が省けます。
ジャガイモは断面が空気に触れると変色するので、ジップロックに入れて空気をできるだけ抜いておきます。
カット野菜は必ず、クーラーボックスに入れて持ち運んで下さい。
作り方
1.火おこしして、炭を準備しておく
2.アンチョビは細かくほぐしておく
3.熱したダッヂオーブンにバターを入れ、玉ねぎがしんなりするまで炒める
4.玉ねぎを取り出し、ダッヂオーブンにバターを追加してからジャガイモ→玉ねぎ→アンチョビの順に敷き詰める
5.生クリームを全体にまわしかけ、パン粉をかぶせる
6.ダッヂオーブンの蓋を閉じて下は弱火〜中火、上は中火〜強火になるように炭を置く
7.40分程度、ダッヂオーブンで加熱
ジャガイモを洗わずに使うと、ダッヂオーブンで加熱する間にでんぷんが生クリームに溶け、とろみが出ます。なので、面倒なホワイトソース作りが不要になります。
一番手間のかかる工程は野菜を切ることなので、事前に下準備さえしてしまえば、キャンプで簡単に作ることができます。ホクホクのジャガイモと甘い玉ねぎ、サクサクのパン粉とアンチョビの塩気がクセになるシンプルな味付けのグラタン。食べるときに好みに合わせて塩胡椒を足して下さい。
スウェーデンのアンチョビは、日本で流通しているイタリア・スペイン風のイワシの塩漬けではなく、ニシンを甘酢と塩、スパイスでつけたもの。
なので、日本のアンチョビ缶を使うと少しスウェーデンのグラタンと味が変わります。より現地の味に近づけたい場合は、甘酢やタイムなどのスパイスを加えても良いですね。
スウェーデンなどの北欧の国々では、家庭料理でジャガイモをふんだんに使うので、スーパーではカット済みのジャガイモや、潰したジャガイモなどが冷凍の大袋で売られています。
これを使うと面倒なジャガイモを切る工程も省けるので、さらにお手軽に作れます。またスウェーデンでは、パン粉の下にチーズを敷き詰めるアレンジレシピも人気です。
北欧料理をキャンプで
山の幸や海の幸を使った料理を、シンプルな味付けで調理する北欧料理は、日本人の口に合うものが多いです。キノコやジャガイモ、魚介類など、日本料理と共通した食材も多く、また日本で食べられているサーモンや豚肉は北欧の国々からも輸入しています。
食を通して繋がっている日本と北欧の国々。アウトドアが盛んで自然の中でリラックスしたいという気持ちも、共通の文化です。
そんな北欧のご飯をキャンプで作って、摘んできた花や松ぼっくりなどでデコレーションしたテーブルで食べる。お気に入りのものに囲まれて、太陽の下で自然を楽しみながら美味しいごはんを楽しむ北欧のライフスタイルを、日本のキャンプでも楽しんでみませんか。