【3/28まで】東京都美術館で開催中。パタゴニアの創設者も愛した木版画家「吉田博」の世界

公開日:2021 / 03 / 26
最終更新日:2021 / 03 / 26

《日本南アルプス集 露営 北岳間の岳》 昭和3(1928)年

ライター:志賀 ヤスヒロ

ゆっくりと暖かい季節になり、本格的なキャンプシーズンが近づいてきました。美しく雄大な大自然が今から楽しみですよね。

今回ご紹介したいのは、そんな大自然を描き続けた日本が世界に誇る木版画家、「吉田博」(1876~1950年)です。

「なんでキャンプ情報サイトに木版画家?」と思った方も多いと思いますが、吉田博は、100年以上前から世界の自然をテーマに絵画や木版画を発表し、世界に名だたるアウトドアメーカーの創設者などから、高い支持を得ていました。

現代のキャンパーとしては、絶対に押さえておきたいアーティストなんです。

そしてなんと現在、上野の東京都美術館では「没後70年 吉田博展」が開催中。読み終えた頃には、ふらっと出かけてみたくなるかも?

それではさっそく吉田博の略歴を簡単に紹介していきましょう!

明治時代に世界へ飛び出した!ダイアナ妃やフロイトに愛された作品たち

1876年に福岡県久留米市で産声をあげました。

幼い頃からその画才が認められ、数々の師の手によってその才能を開花させていきます。

20代からはアメリカ、ヨーロッパからエジプトまで、世界各地を巡る旅を経験します。

その間、油彩画や水彩画を数多く発表していましたが、49歳にてキャリアに転機が訪れます。西洋の写実的な表現と日本の伝統的な版画技法の統合を目指し、木版画に本格的に取り組み始めたのです。そしてそれは50代以降の精力的な活動へと繋がっていきました。

彼の作品の多くは、雄大な自然がテーマとなっています。それは日本に留まらず世界の風景も切り取っていくのですが、イギリスはダイアナ妃、夢診断でも有名な精神科医フロイトも彼の作品を寵愛したそうです。

アメリカが誇るエル・キャピタンを描いた一枚

《米国シリーズ エル・キャピタン》 大正14(1925)年

1925年に発表された木版画「エル・キャピタン」です。

「エル・キャピタンってなに?どこにあるの?」

私も初めてみた時に、そう思いました。

アメリカ人キャンパーなら誰しもが憧れる、アメリカの代表的な国立公園ヨセミテ。その中に位置する、切り立った崖が印象的な岩山がエル・キャピタンです。花こう岩の1枚岩としては世界最大で、古くからクライマーたちの名所です。

ちなみにヨセミテ国立公園といえば、ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)のロゴの原型にもなった、ハーフドームがあることでも有名です。

世界的アウトドアブランド「パタゴニア」のカタログ表紙絵に

アメリカンアウトドアブランド「 パタゴニア(Patagonia)」の生みの親イヴォン・シュイナード。クライマーだった彼も、同ブランドの前身となるシュイナード・イクイップメントのキャリアを始める際、クライミングがベースとなっていました。その彼もまた、吉田博の作品に虜になったコレクターの一人でした。

1991年、イヴォンは、パタゴニアのカタログの表紙に、吉田博のエル・キャピタンがを起用しました。

きっかけはヨセミテ国立公園で持ち上がった大規模開発計画。イヴォンはこの計画に激しく反対し、吉田博のエル・キャピタンをバックプリントにドンッと構えたTシャツを販売します。その売上金はを反対運動を推し進める団体へと寄付しました。

自然との結びつきが強い吉田博の作品は、世界的アウトドアメーカーに影響を与えているほど、高く評価されています。

東京都美術館で開催!キャンパーが「吉田博展」で感じたこと

美術館のフライヤー

吉田博没後70年を記念した展覧会が、東京都美術館で開催されていたので、実際に行ってきました!

所狭しと膨大な数の作品が展示されていて、とにかくビッグスケール!

キャンパー目線での展示の楽しみ方をちょろっと紹介したいと思います。

何を隠そう吉田博は自然を愛する登山家。数々の場所で野営をして過ごしたプロフェッショナルなキャンパーと言えるでしょう!

作品の中にはやはり野営をしている風景も出てきます。
例えばこちらの作品↓

《日本南アルプス集 露営 北岳間の岳》 昭和3(1928)年

《日本南アルプス集 露営 北岳間の岳》を見ると大人が火を囲み、鍋を温めながら談笑しているのでしょうか。これもまたテントが貼ってあってなんともゆっくりとした時間が流れているようで

「こんな感じで、山頂でテント泊して次の日みんなで朝日なんか眺められたら最高だろうなぁ!」

と思ってしまいますよね!

先ほども紹介した《米国シリーズ エル・キャピタン》の大絶景を望める作品の中には「ここの水辺でキャンプしたら絶対楽しいだろうなぁ」と、心の中でテントを設営するのに良さそうな場所を探していたり。

アートという観点ではなく、「キャンパーならこのフィールドをどう楽しもう!?」というスタンスで作品を見ていました。

皆さんも吉田博が残した作品を見ているだけで、心の底からキャンプ熱がメラメラと湧き上がってくるのがわかるのではないでしょうか。美術館を出て近くのカフェでコーヒーを飲んでいる頃にはきっと、キャンプ場の予約サイトとにらめっこしているに違いありませんね笑

ちなみにパタゴニア(Patagonia)のTシャツではないですが、会場ではエル・キャピタンデザインのTシャツが販売されていますよ!

さぁ自然が僕らを呼んでいます!
吉田博が描いたような大自然を満喫したいですね!

「没後70年 吉田博展」 概要

会場:東京都美術館 (東京都台東区上野公園8-36)
期間:2021年1月26日(火)~3月28日(日)
開室時間:9:30~17:30
休室日:月曜日
観覧料:
・一般
1600円(当日)
・大学・専門学校生
1300円(当日)
・高校生
800円(当日)
・65歳以上
1000円(当日)
※事前予約なしで観覧可能。混雑時は入場制限を行う場合があります。

※中学生以下は無料(証明できるものを提示)

※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料(証明できるものを提示)

※前売り券販売期間は終了

公式サイト

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志賀 ヤスヒロ

ヘンテコアウトドアライター

幼少期よりキャンプを経験し、バンクーバーでソロキャンプスタート。
みんなでワイワイキャンプも1人でひっそりキャンプも大好き。
人とは違うオリジナルなキャンプスタイルを模索&発信中!!
Instagram @yasuhiroshiga_p

志賀 ヤスヒロ