若葉マークのキャンパーさんにとって、ギアやキャンプ飯、キャンプ場など、事前にどれだけ情報を得るかはとても重要です。LANTERNをはじめとする情報サイト、個人が発信するSNS、中でもYouTubeなどの動画サイトで情報を得る方も多いのではないでしょうか。
そんな中、キャンプ系人気YouTuberのタナさんが満を持して書籍を執筆され、4月13日に宝島社より書籍「ソロキャンプで使える 鉄フライパン ごちそうレシピ」が発売されました。
今回は初のレシピ本出版を記念して、著者であるタナさんに書籍のことやご自身のキャンプ経験など、色々とお話を伺いました。
Turk社の鉄製フライパンへの強いこだわり
——書籍を執筆されたきっかけはなんでしょうか?
タナさん(以下、敬称略):
僕の動画でも度々登場する「Turk(ターク)」の鉄フライパンは、調理系のキャンプ道具の中でも本当に買ってよかったアイテムでした。
自宅でも使えますし、何より本当においしく仕上がります! 僕としては、ぜひ皆さんに一度使ってみて欲しいアイテムだったので、鉄フライパンを使ったレシピ本を執筆することにしたのです。
——なるほど。たしかに今作は鉄フライパンにこだわったレシピ集ですね。その鉄フライパンに限定したのはどうしてですか?
タナ:
重くて使い勝手が悪いように思われる鉄フライパンですが、実は手間もかからず、ごちそうを作るのに最適なアイテムなんですよ。高温に強く、熱をしっかりと蓄えるため、料理初心者であっても簡単においしく仕上げることができます。
フライパンひとつなので、洗い物などの余計な手間も省くことができます。
コンセプトが「誰でも手軽にキャンプ料理を楽しめる」ということもあり、鉄フライパンに限定したというわけです!
——ちなみに、鉄フライパン以外にどんなクッカーを所有されてますか?
タナ:
メスティン、メスキット、キャンティーンですね。ジブリ飯やミートソーススパゲッティ、ぜんざいなど、色々調理しますよ。
——今後、鉄フライパン以外で書籍をお作りになる可能性は?
タナ:
今のところ予定はないですが、無人島に行く時などに使っているキャンティーンやメスティンなど、軽量な調理器具のレシピは、今後考えていきたいなとは思っています。
おすすめは「バターチキンカレー」
——キャンプ場でもっとも回数の多い料理はなんでしょうか?
タナ:
最も多いものは肉厚ステーキです。レアっぽさを残した焼き加減で作ります。
渓流でステーキを焼くYouTube動画が260万回以上再生されました(笑)
——紹介されているレシピの中でオススメって、ずばりなんでしょう?
タナ:
「バターチキンカレー」です。スープカレー屋で働いていたこともあり、スパイスから作る本格的なレシピです。友人やYouTuber仲間にも提供したことがあるのですが、皆さんに美味しいと言ってもらえたレシピです。
他には「まるごと鶏のスパイス揚げ」でしょうか。キャンプ料理の醍醐味はとにかくインパクトだと思うので、キャンプ場でしかできないような料理に挑戦してみたいと思い、作りました。
スパイス調合は海外のYouTube動画をみたことがきっかけです。
——キャンプ以外でも、例えばご家庭のキッチンで料理されるのでしょうか?
タナ:
家のキッチンでもよく料理を楽しんでいます。その時もTurkの鉄フライパンを使っていますね(笑)
友人らなど大人数で楽しんでいる時に作ります。むしろ、自分のためだけに料理を作るのはキャンプの時だけかもしれません。
掲載する写真撮影は、ぶっ通しで4日間!
——書籍を作るにあたり、苦心された点や工夫された点などもあったと思いますが。
タナ:
鉄フライパンに限定したことで、レシピのバリエーションを増やすことに苦労しました。なるべく素材が被らないようにするのも一苦労でした。また、今回の書籍用に一から考案したものもあります。
特に大変だったのは撮影でしたね(笑)
レシピだけでなく僕のソロキャンプ・スタイルの写真ページもあったので、キャンプ場で実際にテントを設営して撮影しました。早朝から夜までぶっ通しの撮影を4日間行いました。
書籍制作に携わって頂いたスタッフの皆様には感謝しかありません。
——たとえば、ボツになってしまったレシピはあったのでしょうか?
タナ:
焼きリンゴ、ピザ、パンですね。
フライパンで作ってみたかったのですが、蓋がないと完成まで時間がかかりコンセプトと合わないためボツになりました。残念ですが仕方ありませんね。
——今作ではゲストにパティシエの中嶋咲絵様、料理研究家の池上正子様が参加しておいでですが、参加経緯などについてお聞かせください。
タナ:
幅広い層に鉄フライパンで作る料理を楽しんでいただく為、女性目線のレシピが必要でした。
デザートのレパートリーが少なかったためパティシエの中嶋咲絵さん、キャンプだけでなく家庭でも鉄フライフライパンレシピを楽しんでいただけるよう、料理研究家の池上正子さんに参画して頂きました。
お二人とも、流石はプロの料理家さん、彩りが艶やかで、細かなディテールまでこだわりがあって、とても勉強になりました。
中嶋咲絵さんのレシピで特に気に入っているのは「オーブンアップルパイ」でしょうか。シナモンとブランデーが香る大人な味のデザートです。
池上正子さんのレシピでは「じゃがいもとチーズのガレット」ですね。
こちらは、お酒で軽く一杯といった時にちょうどいいお手軽レシピです。
——ソロキャンプ初心者と上級者、それぞれに向けたレシピを考える際に、こだわっていることはなんでしょう?
タナ:
大自然の中で食べるご飯は格別です。ソロキャンプ初心者の方は、日帰りのデイキャンプがオススメです。お昼ごはんを食べに行くだけでも良いでしょう。ですので下準備や手間がかかるものよりは、手軽に作れるレシピを考えるようにしています。
逆にソロキャンプ上級者の方は、仕込みからしっかりと時間をかけて作るレシピが良いですね。ソロキャンプをしている時、僕は料理をしている時間が一番長いかもしれません。仕込みから食事まで3時間かかることもあります。
しっかりと時間をかけて丁寧に行うことで、出来上がりまでの工程も楽しくなります。早い段階からランタンをつけ、焚き火の炎を眺めながら、大自然の中で料理を楽しんでいます。
——やはり、食材は事前準備が大切なんですね。
タナ:もちろんキャンプ場へ向かう道中のスーパーや道の駅などで、地元の食材をチョイスするのもアリです。現地調達した食材で調理するのも楽しいですよ。
ただ、ソロだと食材の量が多すぎたなんてこともありますよね。
僕は動画で楽しんでもらえることも考えて多く作る事も多いですが、(食べきれない食材や料理を)現場で捨てることは絶対にせず、汚れないようビニール袋に入れ、車に常備しているソフトクーラーバッグに入れて持ち帰っています。
初心者は無理せずデイキャンプから始めて自分のスタイルを
——書籍の話題から外れますが、昨今のキャンプブームについてお話を聞かせてください。
タナ:
キャンプ場でキャンパーを取材する企画をYouTubeでやっていますが(これまで200組以上)、キャンプ歴が1年未満の方がとても多い印象です。真冬の寒い時期でもキャンプ場が埋まっているので、キャンプブームだなと実感しています。
ですが、第一次キャンプブームと呼ばれた1990年代の頃に比べて、今のキャンプ人口は半分ほどしかいません。とはいえ、キャンプ用品の市場は年々拡大し続けています。昔と比べてキャンプメーカーも多様化したと思います。
SNSの普及で写真を撮る楽しみや、ギアを集める楽しみなど生活の一部として定着していっていると思います。
——新規キャンパーが増えるのは大歓迎ですが、一方でマナー違反(騒音、焚き火、ゴミ処理など)も増えていると、よく耳にします。
タナ:
マナー違反の問題に関してのニュースは度々目にします。
ただし、初心者故にマナー違反だとわかっていない場合も多いと思います。同じ共通の趣味の人が増えて嬉しい反面、マナー違反によりキャンプに対する悪いイメージがついてしまうのは、すごく悲しいですね。
僕もYouTubeを通して初心者の方にもわかりやすく、キャンプのマナーに関する情報を発信していきたいなと思っています。
——これからキャンプを始めたいと考えている方に対してアドバイスはございますか?
タナ:
最初は無理をせず日帰りのデイキャンプから、キャンプの楽しさや感覚を掴みましょう!
(ギアの購入については)最初は安いものを購入することをオススメします。高くて良いものを一式揃えて形から入るのもいいですが、自分のキャンプスタイルが変わったり、他のギアが欲しくなったりするものです。
僕も一生使うと思っていたけど、買い換えたものもたくさんあります(笑)
それと、目的地のキャンプ場について、しっかりと情報収集しておきましょう! 施設は整っているのか、管理人さんは常駐しているのかなど、最初のうちは高規格のキャンプ場を選ぶと良いと思います。
特に女性は汚れたトイレを避けたいものです。逆に近くに温泉があれば喜んでくれます。キャンプ場を探すときに、併せて調べると良いですね。
あとテントに関しては、事前に組み立て方を学んでおくと良いです。初めてのテント設営は意外と時間がかかります。何時間もかかってしまって、キャンプを楽しめる時間が少なかったなんてこともあります。
YouTubeとかで設営方法が紹介されていたりするので、事前にシミュレーションしておくと良いです。
——これだけは覚えておいて欲しい点はございますか?
タナ:
初心者であれば、必ず風が少ない晴れた日にキャンプに行ってもらいたいです。雨風が強い日のキャンプは、装備が充実していないとすごく大変です。
初めてのキャンプが楽しくなく、トラウマになってしまうのはもったいないですからね。
キャンプ飯だから豪華に!
——タナさんにとってのキャンプ飯の魅力や楽しみ方はなんでしょう?
タナ:
前の回答と被ってしまいますが、大自然の中で食べるキャンプ飯は本当に格別なんです。インスタントのものでもすごく美味しく感じられます。
また、ソロキャンプであれば誰かに邪魔されることもありません。自分のペースで自分の好きなものが楽しめます。
僕のキャンプ飯の楽しみ方は、食材の予算を自宅で食べるものと比べ物にならないくらい豪華にすること。特にステーキなどは良いお肉を使うようにしています!
たまには外で、豪華な食事も良いものですよ。
タナさんの今後は?
——最後に、タナさんの今後のご予定などを教えてください。
タナ:
今年の2月に長年の夢だったキャンプブランド「TOKYO CRAFTS」を立ち上げることができました。これまでの経験を生かし、本当に自分が欲しいと思える最高の道具を作っていきたいと考えています。
現段階での商品ラインナップは焚き火台「KUBERU」のみなので、テントやランタンなどラインナップを増やし、キャンパーの皆様から愛されるブランドに成長させていきたいです。
——本日はお忙しい中、ありがとうございました。
タナ プロフィール
キャンプ料理、風景、など自身のソロキャンプを楽しむ動画のほか、キャンプ道具を徹底レビュー、メーカー取材、キャンパー取材など企画動画もおこなっています。
人気企画の「キャンプ場でキャンパーインタビュー」は200組以上のキャンパー様へインタビューさせていただきました。「見て」「知って」「楽しめる」キャンプ情報を発信しています。
▼YouTube「タナちゃんねる」
https://www.youtube.com/c/solocamping_tana
▼タナちゃんねるブログ
https://tanachannell.com/
「タナちゃんねる」では、撮影のオフショットを紹介中
第2弾インタビューもお楽しみに!
タナ氏の純粋なキャンプ愛と、情報発信をする立場からの真摯な想いに触れ、このキャンプブームが一過性ではなく広く定着することを改めて感じた取材でした。
さて、次回は、書籍にスイーツのレシビを提供しておいでのパティシエ 中嶋咲絵さんにお話を伺います。お楽しみに!
Interview & Text by Yasumin Matsuno
Photo by Rika Takei