私が住むアメリカ・コロラド州では、ワイルドなグランピングを体験することができます。
グランピングと言っても、コテージが建っている場所は標高約4,000m。友人が極地でのグランピング体験を提供するために、標高約4,000mの場所にその貸しコテージを建てたのです。
40歳の誕生日を祝うご夫婦と、その大学の同期4組でとにかくワイルドなグランピングを体験してきました。
危険で険しいグランピング!?
コテージに続く道は雪が積もっているので、アクセスはスノーモービルです。
グランピングと言えど、水と食料、そして何より忘れちゃいけないお酒も全て自分達で運ばなければなりません。加えて予備のガソリンに防寒具も。
まとめるとかなりの大荷物です。
麓からコテージまでは、本来なら順調にいけばスノーモービルで30分。
だけど欲張って荷物を積みすぎて、途中で落としてしまうミスが発生。
雪が深い斜面では、スノーモービルがバランスを崩して谷底へ転落してしまわないように、一旦降りて道しるべを掘ることも。
ふわふわの雪を散らせながら走る場所もあれば、ガリガリの氷の上をガタガタ跳ねながら走ることもあります。スノーモービルが跳ねた瞬間、お尻がフワッと座席から浮かぶのです。振り落とされないためには、必死にしがみつくしかありませんでした。
手軽に楽しめるはずのグランピングですが、そこに続く道は危険で険しいものでした。
標高4,000m、極地で過ごすグランピング
なんとか無事コテージに到着しました。
しかし、ここは標高約4,000m。スノーモービルに乗せた荷物を持ってコテージに運ぶために、たった20m歩くだけで息が切れます。
グランピングで贅沢な思いをするためには、その前に一度苦労を強いられるのですね。
施設とこだわりの薪ストーブ
さて、コテージの中はかなり広い造りです。
これだけ広いとなかなか暖まりそうにありませんが、薪ストーブのおかげで、夜になる頃には半袖じゃないと暑いくらいに暖まりました。
薪も全て使い放題です。
コテージに限らず、この地域では一般の民家も暖房は大抵、薪ストーブを使っています。建物の断熱がしっかりしていれば、薪ストーブでもかなり暖まるのです。
レトロな薪ストーブですが、使い方は簡単。薪をくべる時は、ガラスの脇の取っ手を持ち上げて、扉を開きます。
ガラスの真下にある小さな取っ手を引くと、空気窓が全開の状態になり、強く燃焼して早く暖まります。反対に、夜寝る前は、この取っ手を押して、少ない空気で長く薪が燃え続けるようにしてから寝袋に入ります。
そして溜まった灰は、底にある引き出し状のトレーを引くと、まとめて掃除することができます。
鍋も食器も備え付け。
水道は出ないので、外の雪を集めて沸かして、水にします。
上画像のように薪ストーブの上に鍋やヤカンを乗せて沸かすのです。
雪はたくさん積もっているので、お水は使い放題。ただし、外はいつも強風で寒いので、雪を集めに行くたびに凍える思いを強いられました。
ソーラー発電で電気が使えて、USB端子も備え付け。ただし、携帯の電波は入りません。
グランピングは一日にして成らず
山の上のグランピングと呼べるほど立派なコテージですが、もともとこの場所には何もありませんでした。
「こんなに綺麗な場所なのに、もったいない」。そう思った友人は、誰でも遊びに来れるように貸しコテージを建設することを思いつきました。
建築作業は、雪が降らない真夏の時期にしか行うことができない環境です。
しかし、雪が降らないとはいえ、森林限界より上の山では強風が吹くこともしばしば。屋根を貼る作業中、突風に煽られて転落しかけたり、資材が飛ばされたりしたこともあったそう。
資材はピックアップトラックで何往復もして自分達で運び、作業中の寝泊まりは、キャンピングカー。
「グランピングは、一日にして成らず」
グランピングができる環境の裏には、それを作った人の並々ならぬ苦労があります。
薪ストーブで作る料理
さて、場所は極所でもコテージの薪ストーブと調理器具があれば、自宅と同じように料理をすることができます。
アメリカの朝ごはんは脂っこくてなんぼ! まずはベーコンをスキレットで炒めます。
日本で朝食というと軽くてあっさりしているものが好まれると思いますが、アメリカではその正反対。
あまりにずっしりしているので、カフェなどに行くと「All Day Breakfast(オールデーブレックファスト)」と言って、昼も夜も関係なく朝食のセットメニューを提供していることもあります。
続いて、ベーコンから出た脂でほうれん草とキノコを炒めます。
卵も、スーパーで売っている紙パックに入った卵液なら割れる心配なし。
スクランブルエッグと果物を添えて、ワンプレート朝食の完成です。
お昼ご飯は、サンドイッチ。
そして小腹がすいてきた頃に、おやつのシナモンロールを焼きます。
コテージの周辺散策
このグランピングで体験できるのは食い道楽だけではありません。極地がゆえの周辺散策もあります。
コテージの裏山は富士山より高い4,000m峰ですが、小一時間も歩けば山頂です。
夏場に水が流れているような場所は、今は全て凍っていて、ツルツルのアイススケートリンクみたい。
穏やかな一コマですが、ひとたび風が吹けば、地面に積もったサラサラの雪が舞って顔にあたり、視界も悪くなります。
周辺散策の楽しみ方は、人それぞれです。
スキーを担いで滑る人もいれば、スノーモービルで山の斜面を走り回る人もいます。
山に決められた遊び方はありません。
大勢集まって山に来たからって、みんながみんな同じ遊び方をするわけではありません。2、3人のグループに分かれて、みんな好きなように遊びます。
それもこれも、山を思い切り楽しんだ後に、暖かいコテージに帰れるから。
グランピングのおかげで、普段ならちょっと腰が重くなるようなワイルドな遊びにも、積極的に挑戦できるのです。
グランピングで味わう大人の贅沢
キャンプでもグランピングでも、やっぱり大人の遊びの楽しみは、呑んで食って語ること。
散々外で遊んだ後は、コテージに帰ってみんなで乾杯。
ボトルが凄まじい勢いで空いていきました。
それから音楽をかけて、踊るのです。流行りの洋楽をポータブルスピーカーで鳴らして、部屋を暗くするとそこはまるでクラブのよう。
ここは標高約4,000m。空気は薄いはずですが、みんなキレキレのダンサーでした。
キャンプも人生も自分らしく楽しみたい
今回集まったメンバーは、私以外はみんな40歳。結婚して、子供を持っている人ばかり。だけどたまにこうやって、子供を預けて、大人だけで遊ぶ時間を大切にしているそう。
踊り疲れて、ストーブの炎をみんなで囲んで語り合っている時、ポツリと一人が言いました。
「私は5年後にどうありたいかを考えて、今を生きたいわ」
なんでもない、普通の主婦の言葉です。
グランピングでしっぽりと更けていく夜は、普通のキャンプとは違う大人の渋みがありました。
外遊びのスタイルに貴賤(きせん)はありません。大切なのは、自分がしてみたいことを思いっきり楽しむこと。
キャンプも人生も、のびのびと楽しみたい。そういう大切なことを思い出させてくれたワイルドなグランピング体験でした。