何をしにソロキャンプに行くのかと問われれば…「読書をしに行く」と答えます【ソロキャンプ連載 #4】

公開日:2021 / 11 / 27
最終更新日:2021 / 12 / 13

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」

「アウトドアにおススメの書籍」

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
ここからようやく「アウトドアにおススメの書籍」をご紹介していきます。

たくさんのおススメがあって、本当は全部紹介したいのですが、そうすると30冊くらいになってしまいますので、特に僕のおススメを何冊かピックアップしてご紹介させていただきます。

『絲的サバイバル』(著者:絲山秋子 講談社)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
文庫版も出ていますが在庫は全国的に薄いようです。作家の絲山秋子さんが40歳から挑戦した「1月1回1人キャンプ」を綴ったエッセイ集です。

スポーツカーに七輪をはじめとする最低限のキャンプ用具を積み込み、お酒を飲み、寝る。そして、そこで出会う人のことや感じたことを言葉にしていくエッセイです。

当然のことながら、ソロキャンプってみんな終始無言ですよね。でも、心の中では色々考え、喋っている。それらの心の声を文章にしたエッセイだと思います。

特に『振り返った杉林のなかにはもう夜が潜んでいる。夜はこうやって森の中から生まれるんだな』という文章は、キャンプに行くたびに思い出してしまいます。

『大人の男のこだわり野遊び術』(著者:本山賢司他2名 ヤマケイ文庫)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
単行本がずっと絶版になっていたのですが、ヤマケイ文庫より復刻されました。

タイトルに「野遊び術」とありますが、アウトドアのハウツーは少な目。アウトドアの大先輩たちのアウトドアに対する思いが綴られている本です。

僕はこの本を読んだことをきっかけに金物屋さんや蚤の市でキャンプ道具(正確には「キャンプ用ではないけどキャンプでも使える道具」)を探すようになりました。判断基準は「長く使えるか? 愛着は湧きそうか?」です。

どんどん新しいブランドやギアが発売されるアウトドア市場ですが、本当に自分にあった道具との向き合い方を学ぶことができます。きっと自然や道具への視界が広がる本になると思います。

『山賊ダイアリー』(作者:岡本健太郎 イブニングコミックス)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
漫画です。昨今、アウトドアブームで関連する漫画も一気に増えましたが、最も原始的なキャンプをするのが猟師であり漫画家でもある岡本さんではないかと思います。

キャンプと言うよりも、猟師としての日々を綴った実録エッセイ漫画ですが、そのサバイバル術はたいへん勉強になります。ご本人の体験を漫画にしているので解説が非常に分かりやすいのです。

やったことなくても鳥の解体くらいならできるような気になってしまいます。山賊ダイアリーSSの方がキャンプ色強めです。

『無人島に生きる十六人』(著者:須川邦彦 新潮文庫)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
タイトルの通り、無人島に漂流した十六人の物語です。驚くべきは、明治時代の実話が基になっているということです。人間のたくましさ、生きる力は素晴らしいのです。

この本はノンフィクションの読み物としてだけではなく「アウトドアのハウツー本」としても優秀です。例えば、僕たちが気軽に山で拾ったり買ったりする焚き火用の薪。山で遭難しても薪は簡単に手に入れることができ、火も熾すことはできますが、樹木の無い無人島では薪の確保だけで一苦労です。水の確保も一緒です。

いかにして燃えるものや水を確保するのか? その方法はもちろん、緊急事態でも楽しく過ごすことの重要性を学べる本です。

『人力移動と野営術 ”無人地帯”の遊び方』(著者:高橋庄太郎 他5名 グラフィック社)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
アウトドアの読書は「今、やれることをしながら、次にやりたいことを本で勉強する」が一番の正解だと思っています。

僕であれば、今一番楽しいのは「魚突きをしながら海辺で行う野営」なのですが、できれば長い日数、海だけではなく山や湖の大自然を徒歩で移動しながら何日間か野営をしたい、という願望があります。それを勉強する時間が非常に楽しいのです。

なんせ遊びながら次の遊びをしているわけですから。楽しくないはずがありません。現在、空前のアウトドアブームですが、多くの人たちが楽しむ「ブームのアウトドア」とは一線を画す内容がこの本には詰まっています。

本当は設備が整ったキャンプ場に物足りなさを感じている、という人にはうってつけの本です。

『焚き火料理の本』(著者:小雀 陣二 山と渓谷社)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
もう15年もアウトドアをやっていますが、正直、焚き火料理ってよく分かっていませんでした。だって鉄板やスキレットや鍋を熱することならシングルバーナーで十分ですし、直火で肉や魚を焼くのであれば炭火のほうが圧倒的に扱いやすいからです。

極端に言えば「焚き火で沸騰させたお湯だろうが、ガスで沸騰させたお湯だろうが、カップラーメンの味は一緒」ということです。ただ、そこにある「趣」だけを目的にしているなら、焚き火で調理まではしなくてもいいかなと思っていたのです。

実際、焚き火はあまり火加減を気にせずに、残りの薪の量や気温に合わせて燃やし、炎の揺らぎを眺めることが一番楽しいです。しかし、この本で焚き火調理の本当のおもしろさや、焚き火じゃなければいけないロジカルな部分も理解できました。

「なるほどこんな理由があったのか」と目から鱗の本です。アウトドアには焚き火調理に限らず「なぜわざわざそれを行うのか」が分からないものがたくさんあって、それを勉強することも楽しみのひとつです。

『小林カレー』(著者:ケンタロウ 幻冬舎)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
僕はカレーが一番好きです。3食カレーでもいいです。粉からカレーを作りますし、スパイスミックスを自分でも作るくらいカレーが大好きです。

そんなカレー好きの僕が一番大好きなカレー本。それが料理家のケンタロウさんの『小林カレー』です。カレーは本来、キャンプの定番なのに、ソロキャンプとなるとちょっと大袈裟に感じてしまう。それでも、やっぱりキャンプで食べるカレーは格別なのです。

何しにソロキャンプに行くのかと問われると「カレーを作りに行く」と言っても過言ではありません。

いつも前日にこの本でレシピを決め、スーパーで買い物をして、当日本を見ながら作り、食べている時も本を眺め、次はどのカレーを作ろうか考えるのが好きです。僕のおススメは「納豆スープカレー」と「そら豆といんげん豆のカレー」です。

『山怪 山人が語る不思議な話』(著者:田中康弘 山と渓谷社)

ソロキャンプ連載「何をしにキャンプに行くのかと問われれば」
これは番外編です。ソロキャンプや野営を15年もやっていると時々、不思議な体験をします。

山や海、湖には何かがいるのです。僕は幽霊を信じません。だってこれだけスマホが普及しているのに、幽霊の目撃情報が写真や動画で爆発的に増えないのはいないという証拠なのです。

しかし、そんな僕でも、自然の中には何かいる。これは断言できるのです。

自分の一冊を持って、キャンプで「読書」を

本当はまだまだお気に入りの本があるのですが、文字数の兼ね合いもありまして8冊で終わらせていただきます。

今、紹介した本は当然ですが山ほど出ているアウトドア関連の本のほんの一部です。アウトドアブームで、本屋にもキャンプのコーナーなどがあります。ぜひ、その中で自分にぴったりの一冊を見つけて、試しにキャンプで読んでみてください。

蚊取り線香の香りの中、波の音の中、虫の音の中、焚き火の前、ランタンの灯かり、テントの中――。そういったシチュエーションで読んだ本は、きっと部屋や電車で読んだ本よりもお気に入りの一冊になるはずです。

3 / 3

おすすめ記事

ウイ ケンタ

ライター・コラムニスト。三冊目の書籍『38歳、男性、独身』がKADOKAWAより5/20に発売。

オンラインサロン『喫茶クリームソーダ』運営。アウトドア歴15年目。キャンプは年間40泊以上。車の購入と海辺への引っ越しを計画中。

趣味はアウトドアと散歩。レモンサワーと大型犬が好き。エレカシのファンクラブに長年入っている。

ウイ ケンタの記事一覧