焼く、煮る、蒸すなどさまざまな調理に使え、軽くて持ち運びやすいメスティン。シンプルで少しレトロ感がある見た目もあって人気に火がつき、今やアウトドアの定番アイテムとなりました。
ダイソーでも500円で販売されており、安くて入手もしやすいため、既にお持ちの方も多いのではないでしょうか?
今回はメスティンを使い始めるときのお手入れ方法、シーズニングとバリ取りについて解説します。
メスティンにシーズニングは必要?
ダッチオーブンやスキレットなどの鋳鉄製品で行うシーズニングですが、メスティンにも同じようにシーズニングと呼ばれる作業があります。ただし、鋳鉄製品とメスティンでは目的も方法も異なるので、同じように行うのはNG!製品の性能を保つため正しい方法を知っておきましょう。
メスティンとは
メスティンの特徴はなんといっても軽いこと。また、熱伝導率が高く小さな熱源でも調理できることから、シングルバーナーやアルコールバーナーでも使いやすく、ソロキャンパーにはとても便利な調理器具です。もともと軍隊の携帯品が民間でも使われるようになったという経緯もあり、コンパクトで、軽く、非常に実用的な作りをしています。
このようなメスティンの特徴の理由は素材がアルミであること。まずは素材の違いを知ったうえで、メスティンに必要なシーズニングを考えてみましょう。
シーズニングとは
ダッチオーブンやスキレットは鉄製のため、水分に触れるとすぐに錆びてしまいます。
そのため、使い初めに火にかけて表面を酸化させることで、鉄を侵食してボロボロにしてしまう赤錆びがつかないようにします。さらに油をいれて熱することで表面に油の膜を作ることで、錆びと焦げつきを防ぐことができます。
それに対して、メスティンはアルミでできてるため赤錆びが出ることはありません。メスティンのシーズニングには「アルミ臭を抑える」こと、使っているうちにおきる「黒ずみを防ぐ」という目的があります。
黒ずみは見た目として気になりますし、食事中にアルミの臭いがすると気になりこともありますので、シーズニングをしておくことをおすすめします。
なお、シーズニングで防げる黒ずみはアルミと水、ミネラルなどの化学反応によるもので、食材の焦げ付きとは異なるものです。「シーズニングを行うと焦げつきにくくなる」というわけではありませんので注意が必要です。
シーズニングが不要な場合
メスティンの中には使い初めのシーズニングがいらない商品もあります。アルマイト加工と書かれている商品は、化学的な処理で表面が酸化されていますのでシーズニングは必要ありません。
ただし、焦げつきをとるために、ナイロンたわし、金属たわし、クレンザーなど研磨剤の入った洗剤でゴシゴシとこすると、アルマイト加工された表面が削れてしまうことがあります。そのため、洗う時に鍋を強くこすった場合には、シーズニングを行った方が良いでしょう。
メスティンのシーズニング 基本のやり方
メスティンのシーズニングでは、米のとぎ汁で表面に膜を張ることで、食材とメスティンのアルミ素材が直接触れるのを防ぎます。
さっそく、必要になるものと手順を紹介していきましょう。
準備するもの
- メスティンが丸々入る鍋
- 米
- 水
鍋の中のメスティンが完全に水中に沈む必要があるため、鍋は大きなものが必要となります。
もし、大きなものが無いときには鍋は使わずに、メスティンに米のとぎ汁を満水近くまでいれて火にかけるようにします。
シーズニングの手順
- 初めて行う場合にはバリ取りをおこなう。
バリ取りはメスティンのザラザラになっている縁を紙やすりなどで滑らかにする作業です。バリ取りの方法は後ほど説明します。 - メスティンの取っ手を外す。
取っ手についているチューブが直接なべ底に触れると、高熱で劣化してしまうこともありますので、取っ手は外しておきシーズニングは行いません。 - メスティンを洗剤で洗う
表面についた油などを洗剤で洗い流します。
一度、料理に使ったメスティンを再度シーズニングする場合には、焦げ付きなどもしっかりと落とします。 - 米のとぎ汁を作る
特別なものでなく、ご飯を炊くときに出る米のとぎ汁でかまいません。 - 鍋にメスティンと米のとぎ汁を入れる。メスティンが完全に水中に沈むまで水を足す。
- 鍋を中火にかける。沸騰したら弱火に落とし15分ほど加熱する。
- 鍋から引き揚げそのまま乾かす。
膜をしっかり張るため、そのまま洗わずに乾かします。
一度、シーズニングを行ったら、調理後に洗剤で洗ってもかまいません。
ただし、強くこすると膜がとれてしまいますので、ナイロンたわし・金属たわし、クレンザーなど研磨剤の入った洗剤は使わないこと。柔らかいスポンジと中性洗剤で洗うようにしましょう。
膜を洗い流さないため、洗剤を使わない方が良いという情報を目にすることもありますが、調理は十分な衛生を保ち食中毒を起こさないことが原則となります。
特にキャンプでは屋外で調理を行いますので、特に衛生面は気を付けましょう。
シーズニングのよくある失敗・疑問点
使い初めにシーズニングをしていても、米のとぎ汁で作った膜は少しづつとれてくるため、メスティンがだんだんと黒ずんでくることがあり、定期的なメンテナンスが必要となります。
シーズニングを行う頻度の他に、避けたほうがよい使い方もあわせて確認しておきしましょう。
変色してしまった
シーズニングを一度行ったメスティンも、アルマイト加工をしてある製品でも黒ずんできた場合には、被膜がはがれてきたということですので、一度黒ずみをとってからシーズニングを行いましょう。
軽い黒ずみであればクエン酸をつかってとることが出来ます。メスティンに水を張り、クエン酸を小さじ半分ほどいれ30分ほど火にかけると黒ずみを取ることが出来ます。
もし、黒ずみが取り切れなかった場合や、家にクエン酸が無い場合には、ナイロンたわしを使い黒ずみが無くなるまで、しっかりと磨きましょう。それでも取れない場合には、クレンザーなどの研磨剤の入った洗剤を使うとよいでしょう。
クエン酸を使った場合も、ナイロンたわしで洗った場合も、黒ずみが取れた状態は、被膜が無くなりアルミの素材がむき出しになっていますので、初めて使う時と同じようにシーズニングを行います。
なお、頑固な汚れには重曹がよいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、アルミ製品に重曹はNG!アルカリ性の重曹はアルミと反応して黒ずみが進んでしまうので気をつけましょう。また、先ほどクエン酸を使う方法を紹介しましたが、これは酸性の液体でアルミの表面を少し溶かして黒ずみを落としています。
アルミはアルカリ性にも酸性にも弱く、食材には強いアルカリ性や酸性をもつものがあります。また、赤錆びは発生しないものの、塩分にさらされると白いポツポツとした錆が発生することがありますので、調理後に料理を入れたまま長時間おかないようにしましょう。
なお、食材を焼いたときにつく焦げつきは、シーズニングで防ぐことはできません。
メスティンで食材を焼くときには多めの油を引いて火にかけ、十分に温まってから調理を行うことで、食材のこびりつきを軽減することが出来ます。
ただし、アルミは高温になるとどうしてもこびりつきやすくなります。また、アルミはそもそも熱に弱く高温で歪むことがありますので、強火で熱さないように注意しましょう。
もし、焦げついてしまったら、ナイロンたわしなどで焦げをキレイに落とし、再度シーズニングを行うようにします。
シーズニングは毎回必要?
米のとぎ汁で作った皮膜はだんだんと取れていきますが、シーズニングを毎回行う必要はありません。
調理したものや洗い方により変わってくるので一概には言えませんが、少し黒ずみが見えたり、アルミ臭が気になったとき、頑固な汚れをナイロンたわしなどで落としたときに行えば大丈夫です。
米のとぎ汁以外でも代用できる?
その他のシーズニングを行う方法として、米のとぎ汁の代わりに牛乳で煮る、野菜くずと水を入れて煮る、といった方法を目にすることがあります。
実際にこのような方法でシーズニングを行ったことはないため、何とも言えないのが正直なところですが、牛乳を煮ると鍋底にタンパク質が焦げつくことがありますので効果には疑問が残ります。
また、野菜くずについては明確な根拠がみつからず、おそらく野菜の臭いでアルミ臭をわかりにくくするという程度ではないかな?と考えています。
シーズニングと一緒にやっておきたい「バリ取り」の方法
最後に「バリ取り」の方法を紹介します。順番が前後してしましたが、バリ取りはシーズニングの前に行っておきましょう。
買ったばかりのメスティンの縁はアルミが切断されたままの状態でザラザラしており、そのまま使うと手や唇を傷つけてしまうことがあります。そのため、使い初めに縁を紙やすりなどで磨いて、滑らかにしておく必要があります。
棒状のやすり、紙やすり、耐水ペーパー(耐水性の紙やすり)のいずれかを用意します。紙やすりや耐水ペーパーには番号が振られており、番号が小さいほど荒く、番号が大きいほど細かくなっています。今回は280~400番位のものを選ぶと良いでしょう。
縁に沿ってやすりをかけ、指で縁をなぞって尖った感じが無くなれば、バリ取りは完了です。
今回はメスティンのシーズニングについて紹介をしました。
使い初めにバリ取りとシーズニングを済ませ、後は気になったタイミングで再度シーズニングを行えば、見た目も古びずに使い続けることができます。
メスティンは安価に購入できるものですが、とても実用性の高いアイテムですので、メンテナンスをしながら長く使い込みましょう。